八丁堀 下谷 福島 神田

八丁堀の与力が出役するのは、余程の大捕物で、いずれは殺された武家

「二十七でございます。生れは下谷で、ヘエ――」

「下谷はどこだ」

「それから、もう一つ、あの藤助という野郎は、下谷二長町の鋳掛屋の倅ですよ」

十八九の娘、――これは、殺された主人福島嘉平太の一粒種で、お頼という美しいの。その側から、慰め兼ねて

殺された福島嘉平太はまだ五十そこそこ、武芸で鍛えた身体は、鉄で鋳抜いたよう

「福島殿に間違いがあったそうだな」

死んだ人の事を悪く言っちゃ済まんが、あの、福島嘉平太というのが大嫌いでな。高慢で頑固で、けちで」

「呑む、打つ、買うの三道楽だ。――福島という人、弱い尻でもなきゃ、あんなイヤな奴を使っているはず

「福島嘉平太を御存じで？」

品盗み出して逃げうせ、そのため、盗賊詮議という名義で、福島様も私の兄も永の暇となりました」

「三年前まで、西国のさる大藩に仕え、福島様は勘定方、私の兄は御金蔵の番人をいたしておりました

三つ、一つは殿御手筥に、一つは福島様御手許に、一つは兄が持っておりましたので、お互

「兄は福島様を疑い、福島様は兄を疑い、二人は力を併せて、盗賊を詮議する気も

「兄は福島様を疑い、福島様は兄を疑い、二人は力を併せて、盗賊

「福島様は幸い御裕福で、三年経ってもお困りの様子もございませ

「福島様の御友人で、その頃国許を退転した方でございます」

福島家では笹野新三郎の許しを受けて、葬いの支度に取りかかりました。

「変なことを伺いますが、福島家は裕福でしょうか」

「不思議なことがあるものだよ、私も福島家には三年五年食いつなぐ金があるものと思っていたが、

頼殿と別懇にしていたし、それに私と福島殿とは碁敵だったからな。――性が合うと言うものか、

「御金蔵破り、福島嘉平太殺し、観念せい」

「何？　御金蔵破りは判っているが、福島嘉平太殺しは俺の知ったことでないぞ」

「大縮尻だよ、八。福島嘉平太を殺したのは、どうも岩根半蔵じゃねえ」

、宝物を盗んだのは、岩根半蔵に相違あるまい。福島嘉平太はそれを嗅ぎ付けて跡を追い、星野門弥は嘉平太を疑ってそれ

「狸穴に落合って暮すうち、福島と岩根は折合をつけた。藤助という鋳掛の心得のある下男にタガネ

引入れて藤助に五十両か百両の手間をやって、福島嘉平太を殺し、三千両一人占めにする事を考えた」

「ところが、岩根は福島嘉平太に半分やるのが惜しくなった。藤助を悪企みに引入れて藤助に五十

火口と硫黄をつけて飛ばし、屋根の上に射込んで、福島嘉平太をおびき出し、屋根の上の怪し火を見窮めるところを生垣と板塀越し

半蔵の白状で、ガラッ八もよく知っていることです。福島嘉平太と岩根半蔵は、甲乙のない使い手で、正面から切り結んでは、どっち

槍の穂先が出て、一寸一分の狂いもなく、福島嘉平太の心の臓を貫いた。――藤助はかねての打合せの通り死骸

ポッポと燃えている、――あの晩藤助は、主人の福島嘉平太をおびき出し、生垣にピッタリ身体をつけるようにして、屋根の上の

た奴の仕業かも知れない。いずれにしても、福島嘉平太に深い怨みのある奴の仕業だ。ただあの晩、岩根半蔵が家

盗み聴きした奴の仕業だ、――どうかしたら、福島嘉平太を殺すのを、半蔵がいやになったと見抜いた奴の仕業か

あるのも、後で思い合せると跡部満十郎で、半蔵が福島嘉平太殺しを思い止まって三千両を山分けにする気になりつつあることを見抜い

五日、平次はこれほどの手柄にも慢ずるどころか、神田の家に引籠って、人に顔も見せなかったのです。