銭形平次捕物控 123 矢取娘 / 野村胡堂
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「そんなんじゃありませんよ。深川の門前町裏の――お秀ですよ」
お秀に別れて門前町の番所へ行くと、ちょうどいあわせた洲崎の金六が、
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「あんなのを送った日にゃ、八丁堀の旦那衆から、どんなお小言が出るか判らない。業腹だがとうとう縄を
この四五日の心労と、八丁堀の激励に、金六はすっかり我を折っている様子です。
「八丁堀の旦那かも知れない」
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釣舟屋を始めたいと言っていたくらいだ。――三十三間堂へ這い上がって打ちのめされたように倒れているのを、顔見知りのお千勢が
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して、あわれな恋を墨染の袖に包んだまま、鎌倉の尼寺に入ったということでした。
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そんなことを言いながら、二人は軒並の楊弓場を覗きながら、入船町の方へ歩きました。
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「この娘は、あの晩小田原町の叔母のところへ手伝いに行って泊ってしまいましたよ。何にも知ってる
「小田原町の叔母というのは?」
眼配せするまでもなく、ガラッ八の八五郎は横っ飛びに小田原町へ飛んで行きました。
「どうした八、小田原町の豆腐屋は」
「ゆうべも小田原町の叔母のところへ手伝いに行って、けさ遅く帰って来てこれを見付けた
「幸いお秀は小田原町に行って留守、――半助は煙草入と楊弓を前に置いて、喉笛
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銭形平次と子分の八五郎は、深川の八幡様へお詣りした帰り、フト出来心で結改場(楊弓場)
「兄哥の前だが、深川の殺しが神田まで匂うような南風は吹かないよ。――八幡様へ
「そんなんじゃありませんよ。深川の門前町裏の――お秀ですよ」
深川へ行ってみると、事件は想像以上にこんがらかっておりました。
「お千勢と言い交した男だ。深川中で二人の仲を知らない者はないよ。合図一つでお千勢
「とんでもない。銭形の親分さんが来て下されば、深川中夜が明けたように明るくなります」
帰って来たばかりです。八五郎をつれて三人、深川へ駆け付けた時はもう昼近い頃。
「紋次郎の持物だ。間違いはない。自慢の品で深川中で知っている。――それが死体の側にあったんだぜ
その翌る日、深川へ様子を見にやった八五郎は、こんなことを言いながら帰って来
平次は、仕度もそこそこに八五郎と一緒に三度目の深川に向いました。
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「兄哥の前だが、深川の殺しが神田まで匂うような南風は吹かないよ。――八幡様へお詣りして
翌朝、洲崎の金六の使いが、神田の平次の家へ飛んで来ました。