四日市町 江戸 水天宮 深川 日本橋 永代橋

と、鳶頭は三文字屋の方へは行かずに、四日市町から天神樣へ行きます。

それは三月三日――江戸は桃も櫻も咲き揃つて、すつかり春になりきつた晩のことです。

五日の正午の刻には、どこにゐても必ず江戸へ歸つて來て赤羽橋の有馬樣の水天宮樣にお詣りをします。

「ですから、月に一度そつと江戸へ來て、水天宮樣へお詣りして、小三郎さんに逢つて行くの

は若い時から船頭で、幾度も難破したのを、水天宮樣を信心して助かつたと言つて、月の五日の正午の刻

ゐても必ず江戸へ歸つて來て赤羽橋の有馬樣の水天宮樣にお詣りをします。小三郎さんはそれを知つてゐて、月

お處刑の日は丁度五日だ。浪五郎が赤羽橋の水天宮樣へ、お詣りに來る日だらうな」

久留米二十一万石の大守有馬玄蕃頭上屋敷、三田通りの一角に水天宮を勸進し、正式に諸人の參詣を許したのはずつと後の寛政年間で

明治になつてからですが、寛政以前にも、屋敷内の水天宮に、特志の者の參詣を許したことはあつたのです。

つても埒が明かねえ。あんまり齒痒いから、あつしは深川の尾張屋の親分を呼んで來て、陽のあるうちに下手人を縛

としてもゐられません。まして、川を越して深川の尾張屋が乘出すやうなことになると島吉の顏は丸潰れでせ

に溢れる男女は、一齋に平次の方を振り返りました。深川の御用聞尾張屋の專吉をつれて來ると言つて飛び出した鳶頭が、

「小三郎さんは父さんの本當の子ですが、母親は深川の藝者で、親類の手前や、配偶の思惑があつたので、誰

諸人の參詣を許したのはずつと後の寛政年間で、日本橋に移つたのは明治になつてからですが、寛政以前にも、屋敷内

ガラツ八を振り返りました。正月六日の晝少し前、永代橋の上はひつきりなしに、遲れた禮者と、お詣りと、