江戸 堺 駒形 長崎 向島 駒込 品川 隅田川 綾瀬川

江戸の大通ともあらうものが、召使にチヨツカイを出して内儀にうんと油を絞ら

と言つた、花と酒とに疲れ果てた、不思議な江戸の一角でした。

だと申します。主人はことの外それが好物で、長崎や堺から、大金を出して取寄せて居りました。まことに黄金の汁のやうに

ても構ひませんか。私は去年の暮まで、駒形の此家の方に奉公して居りましたので、大概のことは知

「伯次さんと來ては、日本一の珍らし物好きで、駒形の御店でも、時々それを盜んで呑んでは主人に叱られて居りまし

法醫などがある筈も無いのですが、それでも長崎には和蘭人が居り、從つて蘭法らしいものも日本には芽生えて

たものだと申します。主人はことの外それが好物で、長崎や堺から、大金を出して取寄せて居りました。まことに黄金の汁

「親分、向島は見頃ださうですね」

繩を返上して、女房に駄菓子でも賣らせるよ。向島へ誘ひ出さうといふのも佐渡屋に誘はれたのぢやないか。あすこに

「俺の方が餘つ程呆れるよ。そんなに向島が眺めたかつたら、縁側に昇つて背伸して見ろ、梁に顎

言つちやいけません。いくら背伸したつて、明神下から向島が見えますか」

八五郎は、良いお天氣に誘はれて、フラフラと向島に行つたのも無理のないことでした。

八五郎が、向島の寮から歸ると、向柳原の自分の宿の前を素通りに、明神

。今日はこれで二度目だ。花はどうだつたえ、向島の景氣は？」

「へエ、あつしが向島へ行つたのをよく御存じで？」

「冗談ぢやありませんよ。明神下の縁側から向島が見えるわけが無いぢやありませんか」

あるし、まだ少し酒の氣が殘つてゐるやうだ。向島で飮んだ證據だらけぢやないか」

「ところで、向島の土産があるだらう。俺を誘ひ出した樣子は唯事ぢや無かつたが

「その吹聽は、いづれ春永に伺ふとして、向島の話はどうした」

で、川面は遊山船で一杯、小僧の一人や二人が向島へ駈け出したところで、花見船を見付けることなどは思ひも寄りません

でした。折から花は眞つ盛り、日和は上々、向島の土手の上は人間で盛りこぼれ相で、川面は遊山船で一杯、

向島から急の使が、佐渡屋の騷ぎの中へ飛込んだのです。

寮番喜八と一緒に向島へ行つた平次は、案内の百姓に導かれて、綾瀬川寄りの流れ

乘つて浮かれて居る氣になれなかつた。そこで向島の寮へ行つて、近所の流れに釣れても釣れなくても構は

て、佛壇は開いたまゝ、――その佛壇は駒込町の往來に背を向けて、六疊一パイにはめ込みになつた豪勢

引汐に乘つて、俺達が窓から覗いた頃は品川の海へ流れて行つたに違ひあるまい」

晝の引汐で、底が見えるほどよく澄んで居ります。隅田川がドブのやうに濁つた今日とは違つて、いろ／＼の物語

近所の子供が見付けて大騷ぎになつたんです。綾瀬川寄りの三尺ほどの流れの岸で、釣竿を抱いたまゝ死んでゐる

向島へ行つた平次は、案内の百姓に導かれて、綾瀬川寄りの流れの岸に向ひました。