江戸 市ヶ谷 神田

請負仕事などをして居たやうです。三年前から江戸に落着いて、こんな商賣を始めましたが、大工や左官の心得はあつ

交つて居ないとは限らず、その時持出されて江戸へ運ばれた無極印の慶長小判も、五枚や十枚ではなく、

の間から見付けて、東海道を遙々人目につかぬやうに江戸まで運んだんだから――待てよ八、お前あの僞極印の小判を持つて

み出し、蟻が物を運ぶやうに、少しづつ運んで江戸へ持つて來たのさ。お安は多分以前は久八の妾か何ん

「小僧さん、お前は直ぐ市ヶ谷の店へ歸つてくれ。お孃さんが何うかしたら、家へ

乍らも手早く仕度をして、ガラツ八と今吉をつれて市ヶ谷へ急ぎました。何んでもないやうな事件のくせに、妙に

が、併し、市ヶ谷の寶屋へ飛込んだ平次も、今度ばかりは手の下しやうもないのに

二人は市ヶ谷に飛びました。

主人の葬ひは、三日も前に濟んでゐるし、神田へ行つた娘のお清の歸りが遲いからと言つたところで、まさか