湯島 丸山町 小石川 江戸 富士山 高尾

この男は勇太郎という湯島のささやかな炭屋の亭主で、幼友達の染吉というのと、今日の夕刻妻

「染吉と私は湯島に生れて湯島に育って、本当の幼友達でございます。私はこの通り分別

「染吉と私は湯島に生れて湯島に育って、本当の幼友達でございます。私はこの通り分別も工夫もない

、ヘエ、人から聞かされてびっくりいたしました。私も湯島のお宅へ顔だけ出して参りましたが気の毒なことでございます。気持の

長屋で一と通り直助兄妹のことを訊いて、それから湯島を廻って、殺された染吉の家へ立寄り、線香を上げて様子を見

なのが嫌になって、この一年ばかり前から、丸山町の直助のところへ入りびたって、その妹のお辰というのに夢中になって

「丸山町の直助――聞いた事のない名だな」

「差当り丸山町の直助はどうです」

平次とガラッ八は、そこから真っ直ぐに、丸山町に飛んだことは言うまでもありません。

丸山町の直助の家は、崖の上に建った立派な家で、構えも木口

「三輪の親分が乗り込んで来て、丸山町の直助の家を根気よく家捜ししましたぜ」

丸山町へ行って崖の下の方から見ると、直助の家は竹林の上に

てしまって、下枝は青々と残したまま、その上から小石川の高台も富士も見えるようにしてあります。

「フーム、こんな物を持つのは、江戸でも名のある町人か大通、でなければよっぽど思いあがった人間だ。―

「江戸には滅多に見られない家だが、ちょいと家の中を見せて貰えまい

で儲けたような事を言っているが、三年前江戸へ来た時は裸一貫で、それから何をするでもなく金が出来て

「富士山の見えるのが自慢でございますが、あの通り孟宗竹が伸びて、せっかくの

駆け出しました。贋金造りを縛った褒美で、三浦屋の高尾の身請でもするような気でいる空想家のガラッ八ですが、一面に