荒川堤 江戸 千住 神田

「ツイ十日ばかり前から、荒川堤で狐の嫁入がチヨイチヨイおこなはれるんですよ」

急所を外れるからいけないんだ。例へばあの邊から江戸へかけて質屋を張らせるとか、提灯屋を當つて見るとか」

て居りますが、まだ八州の役人も顏を見せず、江戸の御用聞の平次が來ても、遠慮しなければならぬほどの人間は

がさう言ふのも無理はありません。千住の先は江戸の町奉行の管轄でなく、言はば平次は繩張り違ひですが、この老御用

「あわてちやいけない。俺は江戸の町方の御用聞だから、八州の役人が頑張つて居ちや、いくら

「江戸の町方のお方？――さうですか。私は和助、伜の行方を

喜八は平次を友達にして了ひました。幸ひ江戸を離れると、神田の錢形平次もあまり顏を知られては居ません

の父親は清水の旦那の若い時分の友達で、昔は江戸で一緒に仕事をしたが、清水の旦那はすつかり殘して尾久に引込ん

者と、今は清水の主人になつてゐる和助が、江戸で落合つて懇意になり、木曾の御留山を伐り出して巨萬の暴富を

だらう。一と晩五兩十兩の仕事になれば、江戸から稼ぎに來るのはいくらでもある」

江戸の街へ入るとすつかり夜が明けて、すが／＼しい夏の朝風が

堤の上に提灯が六つ出て、そいつが行儀よく千住の方へ土手を練つたんで、川向うの尾久は祭のやうな

「王子が近いから、いづれ裝束稻荷の眷屬が、千住あたりの同類へ嫁入するんだらうてえことでその晩は濟んだが、驚い

か。それが六つづつ三つになつて、行儀よく千住の方へ練るから見物でさ」

喜八がさう言ふのも無理はありません。千住の先は江戸の町奉行の管轄でなく、言はば平次は繩張り違ひですが

仕事を續け、二三年前舊惡が露見して、千住の宿で自殺して相果てました。

は川向うの百姓家に隱して居ることが判り、清次郎は千住の與三松の仲間のところに隱してあることが判りました。

にお夏を浪人大井半之助に手渡してその保護に委ね、千住から和助の伜清次郎を救ひ出して、留守を預かるお房に引渡し、

を教へてやるからと、和助の伜の清次郎をおびき出し、千住の仲間のところに隱して、和助を強請つたのさ。金を出さ

の八五郎は、額を叩いて先に立ちました。神田から尾久まで二里に餘る道ですが、斯う調子づくと、八五郎

にして了ひました。幸ひ江戸を離れると、神田の錢形平次もあまり顏を知られては居ません。

「神田の錢形平次兄哥を知らない者があるものか。顏を知らなくとも

「――神田の平次が來て、下手人の目星が付いたさうだから、明日は伊太郎