昌平橋 松永町 蔵前 市ヶ谷

は、月に二三度ずつは逢っている。現に昨日も昌平橋ですれ違って、機嫌の好い挨拶を聞いて別れたばかり、まさか、あれほどの

お蔵前から引越した、松永町の家にだけでも、お柳、お辰、お村と妾が三人、

ろと古蒲団を詰めさせ、死骸を貰って、夜中に松永町まで運んで来た。夜泣き駕籠が腰を抜かすほど金をやって運んだ細工

大徳屋孫右衛門というのは、お蔵前札差衆の一人、先代までは大町人中でも手堅い家風を褒められまし

お蔵前から引越した、松永町の家にだけでも、お柳、お辰、お村

目を挙げました。三十五六のちょっと好い男、蔵前時代から十五六年も孫右衛門に仕えたそうで、見かけ以上に手堅そう

「市ヶ谷」

て来たのを私はよく知っています――同じ市ヶ谷で生れたんですもの。お辰さんは毎日泣いていましたよ」