銭形平次捕物控 029 江戸阿呆宮 / 野村胡堂
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、甲州街道の手近な宿々を捜し廻った上、東海道はわざわざ箱根まで行ってみたが、この半年の間に関所破りもなく、怪しい女も通ら
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も通らねえ。それから、別に人をやって品川と三崎と伊豆の船番所も当ったが、女を乗せた船なんか一隻も通ら
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銀猫、いろは茶屋といった岡場所、比丘尼から夜鷹まで、八丁堀の旦那の御声掛りで、町役人立会の上虱潰しに見て廻ったが、
のを見るとそっと甚三郎の家への通路を抜け出して、八丁堀へ飛んで行き、危ないところで平次とガラッ八を救うことが出来たのでし
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羽織を引掛けると、ガラッ八の八五郎を案内に、本所へ飛んで行きました。
「それはもう、本所から深川にかけて荒されているんですもの、どんな事でもして悪者
も糸目をつけず、その上昨年の夏頃から、浅草、本所、深川を中心に、毎月八の日を決めて、一ヶ月一ヶ町の
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そんな馬鹿な事があるものか――と江戸の御用聞手先は、一斉に奮起しましたが、足跡一つ残さず、
こうして銭形の平次が登場するまで、江戸の娘達が三十人も姿を隠したでしょう。
それから半月経ったある日江戸の街々の甍の上に泳いだ鯉幟が影を潜めると、長い旅に出
「それが驚いたよ、親分、江戸の盛り場というものは、思いの外大したものだね」
もこれも気を揃えて親のためだ。何だって江戸の盛り場にはあんなに親孝行が多いんだろう」
巴屋というのはその頃、越後屋と対抗した江戸一流の呉服屋で、呉服の外に、大伝馬町、金吹町などに唐物屋、米屋、
「三十人の女は、江戸の盛り場にも売られず、上方へ送られた様子もねえとなると、
へ送られた様子もねえとなると、どうしても江戸に居なきゃアならないはずだ、――もっとも、生きているか、死んで
平次の言うのは尤もでした。江戸の真ん中で、三十の死体を、人目に触れないように処分する方法はあり
ほどの者が言ったくらいで、施米などをやって、江戸の人気を一身に集め、商売の金儲けにそれを利用した上、歓楽と
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たとみえるな、――安心するがよい、奥州街道、中仙道、甲州街道の手近な宿々を捜し廻った上、東海道はわざわざ箱根まで行ってみたが、
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ガラッ八は心得顔に一つ目の橋を渡って両国の方へ早走りになります。
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「それはもう、本所から深川にかけて荒されているんですもの、どんな事でもして悪者を
に見て廻ったが、暮から先月へかけて、本所深川でさらわれた娘などは一人も居ねえ」
をつけず、その上昨年の夏頃から、浅草、本所、深川を中心に、毎月八の日を決めて、一ヶ月一ヶ町の施米
「でも親分、本所深川の人さらいを、この上放っておいては、父親の名折れになります」
「冗談でしょう、お品さんほどの新造は、本所深川に五人とはねえ」
良いことばかりはないもので、こんな結構なことのある本所深川に、近頃若い女の誘拐が流行るのには困ったものじゃありません
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長い旅に出ていた平次はどこからともなく、神田の家へ帰って来ました。
「銭形の親分さんで――今神田のお宅へお知らせしようと思っていたところですよ」
「神田の平次だよ」
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「吉原から始まって、千住、新宿、品川、板橋、の四宿を始め、大根畑から金猫銀猫、いろは茶屋といっ
怪しい女も通らねえ。それから、別に人をやって品川と三崎と伊豆の船番所も当ったが、女を乗せた船なんか一
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「吉原から始まって、千住、新宿、品川、板橋、の四宿を始め、大根畑から金猫銀猫、いろは茶屋
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「吉原から始まって、千住、新宿、品川、板橋、の四宿を始め、大根畑から金猫銀猫、いろ
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費用にも糸目をつけず、その上昨年の夏頃から、浅草、本所、深川を中心に、毎月八の日を決めて、一ヶ月一
、十一月は飛んで森下、それから海辺大工町、それから浅草へ行って――これは驚いた、人さらいは執念深く施米の後を追っかけ
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「桶屋の甚三郎と言や、日本橋で知らない者のない因業な片意地な人間ですぜ」
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両国橋の本所寄りの方にも、これは直径五寸もあろうと思われる大