本所 江戸 宇治 盛岡 麹町 市ヶ谷

「私はこんな事になるとも知らずに、本所の知合のところへ行つて泊りました。今朝少し早目に歸つて見ると、

尤も、江戸の政道も頽廢期になると、義賊といふ輩が横行しました。日本

江戸の名ある泥棒達には、長い間、それは一つの課題でした。

、それを晴着にも寢卷にもしようといふ徹底振り、江戸といふ時代には、こんなにまで落ち果て乍ら、飢ゑも凍えもせずに

、お茶だけは贅を言つて居るよ。その茶は江戸ぢや手に入らない。京の知合ひに頼んで、宇治から送らせて居る

、番頭の宇佐美左内に腹を切らせて退轉し、江戸の町の中に隱れて、大金儲けをしてゐるわけだ」

切り、用人大竹孫右衞門は、藩中の大金を盜んで江戸へ身を隱し、高利の金を貸して鍵屋金右衞門となつた。

江戸ぢや手に入らない。京の知合ひに頼んで、宇治から送らせて居る」

「そいつは南部樣だ、奧州盛岡で十萬石（後に二十萬石）あつしは南部坂の御屋敷へ出入り

「ところで、麹町九丁目の騷ぎはどうなつたんだ」

本名は七兵衞だが、人間があんまりケチだから、麹町ではケチ兵衞で通つてまさあ。唐辛子屋といふから、昔

は大名屋敷と旗本屋敷ばかり、その中に挾まつた、麹町の町家。そのまた奧に押しひしがれたやうな三軒長屋があり、騷

態も捨て兼ねて、長い間散々搜し拔いた末、麹町九丁目の鍵屋金右衞門が、大竹孫右衞門の變名と知り、いろ

「御下屋敷だから、市ヶ谷の御上屋敷と違つて、出入りもやかましくはなく、御見張りも手薄だ