八丁堀 入谷 江戸 甲州 神田 上野 銀座 日本橋 小川町

翌る日、八五郎が八丁堀の組屋敷で調べた熊井熊五郎の犯跡を、半紙三枚ほどに書き連ねたのを

これを見ちや休んでも居られめえ。朝のうちに八丁堀へ行つて、笹野の旦那と打ち合せ、晝から夜へかけて心當りの

某、お玉ガ池の用心棒で評判のよくない某、入谷の浪宅に燻ぶつてゐる押借の常習犯で某と、十人ばかりの札付の

仕立屋駒吉に傷を負はせて逃げた熊井熊五郎が近頃また江戸に舞ひ戻つて御府内を荒してゐるやうだ。三年前は捕り損ねた

熊五郎が江戸を荒し始めたのは、かなり古いことで、元は上方から來たとも言ひ

になるため、仲間の重立つたものと賭けをして、江戸の第一流中の一流といふ大町人、有徳の有名人、お役付の武家など

が、三年經つた此年の夏あたりから、又もや江戸に舞ひ戻つて、荒し殘した大町人有名人の家を、虱つぶしに荒し

「熊五郎の荒した家は、江戸で家元とか本家とかいふ大町人の家ばかりだ。『江戸諸用細見圖

それから二刻あまり、重大な謎をはらんだまゝ、江戸の夜は靜かに更け渡ります。

兇賊熊井熊五郎は、間もなく東海道筋で捕へられ、江戸に送られて御處刑になりました。娘お秀は平次の情けに護られ

、かなり古いことで、元は上方から來たとも言ひ、甲州から入つたとも傳へますが、兎も角過去十年の間に、ざつと九十

來た仕立屋の駒吉、その娘のお秀の美しさは、神田中に知らぬ者も無かつたのです。

神田お臺所町――錢形平次が年久しく住んでゐる袋路地の入口に

尤も駒吉は三年前まで上野山下に大きな店を持つて、東叡山の御出入りまで許された名譽の

ところが今から三年前、上野山下の呉服屋伊勢屋幸右衞門の家へ忍び込んで見露はされ、多勢

明十月二十六日、上野山下の伊勢屋幸右衞門の家に押入り、千兩の金を無心するつもり

その晩から翌る日にかけて、上野山下の伊勢屋の騷ぎは大變でした。三戸前の土藏のうち、

ぜ。町年寄の奈良屋右衞門、朱座の淀屋甚太夫、銀座の小南利兵衞、油屋の大好庵、米屋の桑名屋、紙屋の西村、佛師

その晩、熊井熊五郎は、尾張樣御呉服所、日本橋二丁目の茶屋新四郎の奧へ押し入り有金八百兩を奪ひ取つた上、歸り

「小川町の御旗本、千二百石取の篠塚金之助樣のお屋敷に入り、五百兩の

平次は手早く仕度をすると、八五郎を促し立てるやうに小川町に向ひました。

といふのは、有福で聞えた大旗本で、屋敷も小川町の一角を占め、小さな大名ほどの暮し向に見えます。平次と八五郎