八丁堀 門前町 三十三間堂 鎌倉 入船町 小田原町 深川 神田

「あんなのを送つた日にや、八丁堀の旦那衆から、どんなお小言が出るか判らない。業腹だがたうとう繩を

この四五日の心勞と、八丁堀の激勵に、金六はすつかり我を折つてゐる樣子です。

「八丁堀の旦那かも知れない」

「親分、折角こゝまで來たんだから、ちよいと門前町裏を覗いて見ませうか」

「そんなんぢやありませんよ。深川の門前町裏の――お秀ですよ」

お秀に別れて門前町の番所へ行くと、丁度ゐあはせた洲崎の金六が、

から釣舟に乘つて、汐見橋の下をくゞれは、すぐ三十三間堂だ。――半助は櫂が自慢だらう、釣舟屋を始めたいと言つて

釣舟屋を始めたいと言つてゐたくらゐだ。――三十三間堂へ這ひ上がつて打ちのめされたやうに倒れてゐるのを、顏見知りの

退して、あはれな戀を墨染の袖に包んだまゝ、鎌倉の尼寺に入つたといふことでした。

ことを言ひながら、二人は軒並の揚弓場を覗きながら、入船町の方へ歩きました。

「この娘は、あの晩小田原町の叔母のところへ手傳ひに行つて泊つてしまひましたよ。何ん

「小田原町の叔母といふのは？」

する迄もなく、ガラツ八の八五郎は横つ飛びに小田原町へ飛んで行きました。

「どうした八、小田原町の豆腐屋は」

「昨夜も小田原町の叔母のところへ手傳ひに行つて、今朝遲く歸つて來てこれ

「幸ひお秀は小田原町に行つて留守、――半助は煙草入と揚弓を前に置いて、

錢形平次と子分の八五郎は、深川の八幡樣へお詣りした歸り、フト出來心で結改場（揚

「兄哥の前だが、深川の殺しが神田まで匂ふやうな南風は吹かないよ。――八幡樣へ

「そんなんぢやありませんよ。深川の門前町裏の――お秀ですよ」

深川へ行つて見ると、事件は想像以上にこんがらかつてをりました。

「お千勢と言ひ交した男だ。深川中で二人の仲を知らない者はないよ。合圖一つでお

でもない。錢形の親分さんが來て下されば、深川中夜が明けたやうに明るくなります」

歸つて來たばかりです。八五郎をつれて三人、深川へ駈け付けた時はもう晝近い頃。

「紋次郎の持物だ。間違ひはない。自慢の品で深川中で知つてゐる。――それが死體の側にあつたん

その翌る日、深川へ樣子を見にやつた八五郎は、こんなことを言ひながら歸つて來

、仕度もそこ／＼に八五郎と一緒に三度目の深川に向ひました。

「兄哥の前だが、深川の殺しが神田まで匂ふやうな南風は吹かないよ。――八幡樣へお詣りして

翌朝、洲崎の金六の使ひが、神田の平次の家へ飛んで來ました。