小石川 本所 善國寺 富坂 富士見町 江戸 牛込 神田

。何しろお鈴坊が嫁に行くとなると、牛込から小石川かけての若い男は皆んな半狂人だ。脅かしの手紙を抛り込む奴がある。

「それが、本所の伯父さんの形見なんで」

樣の境内へ入つて行きました。神樂坂の毘沙門樣は善國寺の境内を併せて、今よりは遙かに廣く、眞夜中過ぎのたゝず

「富坂のお鈴坊、後家のお此の娘で、年は十九、厄は厄で

兜屋の手代の岩三郎に、隣の息子の三七、――富坂の方角では、お鈴の從兄の大工の勇太郎」

「少しも見當はつきません。――富士見町に運座の會があつての歸りでしたが」

「イヤになるなア、金なんざ百も欲しくねえが、江戸の良い娘がベタ惚れといふ卦が出ませんかね。塵溜をあさつ

江戸は太平無事で、氣のきいた泥棒猫も居さうはなく、平次の出勤を

七夕過ぎる頃から暑さがぶり返して、お盆前の江戸は、釜の中に坐つて居るやうな心持でした。何處の家で

んよ。何しろお鈴坊が嫁に行くとなると、牛込から小石川かけての若い男は皆んな半狂人だ。脅かしの手紙を抛り込む奴が

いつになく几帳面に格子戸を開けて入つて來ました。神田明神下の、錢形平次住居の段、――尤も、几帳面に引かない