銭形平次捕物控 063 花見の仇討 / 野村胡堂
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、油屋の兼吉は、申譯相立ち難く其儘留め置かれ、八丁堀の空氣は、もうこの事件を解決と見て居る樣子なのが、ひどく
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飛鳥山の花見歸り、谷中へ拔けようとする道で、錢形平次は後から呼止め
道で、錢形平次は後から呼止められたのです。飛鳥山の花見の行樂に、埃と酒にすつかり醉つて、これから夕陽を浴び
人達に預けると、獲物を見付けた獵犬のやうに、飛鳥山へ取つて返します。
人や十人は見て居た筈だ。が、花時の飛鳥山にはそんな茶番は毎日二つ三つある。血糊の使ひ方と、巡禮
順當に馬道を出て、多勢と一緒に順當に飛鳥山へ來たことは、時刻から見ても先づ疑ひは無いやうです。
「そんな浪人者は、飛鳥山に二三十人居ましたよ、親分」
足取りから、平次は何やら讀み取るやうな心持で、再び飛鳥山の方へ向ひましたが、お瀧は山に登る樣子もなく、無
「首を締めたんぢや無い、虚無僧になつて飛鳥山で返り討にしたんだ。留守番の番頭と女房のお夏は下手人ぢや無い
やうな筈も無く、拔け出したところで、此處から飛鳥山まで飛んで待つて、虚無僧に化けて主人を殺すにしては、喜八
飛鳥山の上で、敵討騷ぎのあつた時刻まで、蔀半四郎は何處に居た
。馬道から、何を考へたか平次の足は、又飛鳥山の方へ向つて居るのです。
「それぢや飛鳥山へ行つて、日の暮れるまで頑張つてくれ。あの昨日の騷ぎの
「幸ひ、飛鳥山のあの茶店の前で仇討の茶番をする話を聽いた。――お前
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、狹い戸口を出て、月の光を踏み乍ら、江戸の方へ辿りました。次第に夜の朧の中に消え込む二人の後ろ姿
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、馬道は歩けません。扮裝は風呂敷包にして、王子の佐野屋で着換へました」
山に登る樣子もなく、無關心に山裾を廻つて、王子の町へ出ると、その儘、後も振り向かずに、花見茶屋の佐野屋の
いことがある。上野の暮れ六つが鳴つたら、王子の佐野屋の方へ降りて來い」
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「眞物の虚無僧で敵持だつたら、今頃は大宮あたりまで逃げ延びてゐますよ。飛鳥山で腕組をし乍らお月樣を見
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瀧に弄ばれたやうな氣持で、平次はムシヤクシヤし乍ら神田へ歸つて來ました。
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「俺は少し訊き込み度いことがある。上野の暮れ六つが鳴つたら、王子の佐野屋の方へ降りて來い
やがて、雀色時、櫻の梢を渡つて、上野の暮れ六つの鐘が鳴ります。