江戸 下谷 上野 神田

「信州ですよ、尤も十七の時江戸へ出て、二十五年も奉公してゐるが――」

たが、それはもう二十何年も昔のことで、江戸へ出て人間を害めることなどは、夢にも考へちやゐません」

の夕刻、下男の作松は、辛くも春日家を脱け出すと下谷竹町から神田明神下まで一氣に飛んで、錢形平次の家へ轉

夢中になつちやいけねえ。御用聞にも繩張りがある、下谷竹町は佐吉の繩張りだ、俺はあんなところまで乘出すわけには行か

ガラツ八と佐吉が滅茶々々に縛り上げた曲者を見ると、下谷から淺草の界隈を、物貰ひをして歩く馬鹿の馬吉といふ達者

「だつて御新造さんは、上野の午刻の鐘が鳴るズーツと前から、ツイ今しがたまで、私と一緒に

主人と一色さんは稽古部屋、そして昨日と同じやうに、上野の午刻が鳴つたら、禁制の賦を吹くのです」

やがて上野の正子刻の鐘が鳴ると、奧の稽古部屋から、不氣味な

「馬吉には、上野の正午が鳴つて、奧で笛の音がしたら、そつとお孃

下男の作松は、辛くも春日家を脱け出すと下谷竹町から神田明神下まで一氣に飛んで、錢形平次の家へ轉げ込んだ

それから眞つ直ぐに神田へ――。