銭形平次捕物控 118 吹矢の紅 / 野村胡堂
地名一覧
本所
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本所の四ツ目に住んで、四ツ目の銅八と言われるに不思議は
江戸
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八と言われている心算だったでしょう。銭形平次の、江戸に鳴り響く噂が、癪で癪でたまらないといった人柄でした。
両国
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のないことを言われながら、半日油を売った帰り途、東両国の盛り場に差しかかったのは、かれこれ申刻(四時)に近い時分でした。
緒になる前、一二年ここの水茶屋で働いていたお静は、両国へ来ると――往来の人の顔にも両側の店構えにも、いろいろと古い記憶が蘇
う二十四五の女で、かつては水茶屋のお静と張り合った両国第一の人気者。身持の方は評判の良い女ではありませんでしたが、芸と容貌
お静は両国でツイ今見て来たことを一と通り話して、
が帰るとすぐ、八五郎並の武者振りを整えて、フラリと両国へ出かけました。大きな弥蔵を二つ拵えて、肩で調子を取って玉水一座の裏
二人は両国へ飛びました。
甲府
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銭形平次はお上の御用で甲府へ行って留守、女房のお静は久し振りに本所の叔母さんを訪ねて、
て、銅八の視線を避けました。が、平次が甲府から帰るのはいつのことやら判らず、お静の手一つでは、
「いや、親分は甲府へ行って、いつ帰るか解らない。親分がいちゃ、こんな出すぎた
「銭形の親分は甲府へ行って留守ですよ、だからあっしが――」
両国橋
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哀れ深い縄付の後ろ姿を見送って、お静の重い足は、両国橋を渡って、自分の家――平次の留守中近所の耳の遠い婆