甲州 辰巳 赤坂 佐賀 深川 永代橋

次男で、評判のお方だが――三日前まで甲州へ行つて居られた筈だ。甲州勤番の兄さんの御用でな」

。この上もなく堅固に暮して居ると言つても、辰巳のお羽織だつた昔のおもかげが、嚴重な表情の間を漏れて、甘く

、昨日も久し振りで遠乘りがして見たいからと、赤坂の親類へ參るのに、わざ／＼前の日から馬の支度をさせまし

「赤坂だ、――遠縁の園江金之丞樣の御次男で、評判のお方だが

娘の叔父といふのは、深川佐賀町に住む三千五百石の大旗本で、板屋八十郎といふ無役ながら裕福の

斯うなると嫌も應もありません。明神下から深川佐賀町まで飛んで行くと、

娘の叔父といふのは、深川佐賀町に住む三千五百石の大旗本で、板屋八十郎といふ無役ながら裕福

形平次は八五郎の使の者と一緒にいよ／＼深川に乘込んで、この事件の中心に首を突つ込むことになつて

は斯うなると嫌も應もありません。明神下から深川佐賀町まで飛んで行くと、

ませんよ。武家風のお孃さんですよ、――永代橋の欄干に凭れて、泣き出しさうな恰好をして居るぢやありません

「叔父が永代橋から、馬に乘つたまゝ、大川に落ちて亡くなりました。――

たのは四日前の朝。意氣揚々として永代橋にかゝると、馬はいきなり狂奔して棒止ちになり、鬣に獅噛

にさう申されると私も變な心持になり、何心なく永代橋へ參り、――屋敷から橋は、裏門を出ると直ぐでございます

永代橋の袂の直ぐ側、路地の中へスルスルと入る八五郎を、平次は

平次はそんな事を言ひ乍ら、永代橋の欄干に凭れて、ゆら／＼と搖れてゐる、春の水を眺め