銭形平次捕物控 311 鬼女 / 野村胡堂
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「長者町のお粂さんが、親分に逢はせろと言つて聞かないんですよ、どう
「それどころぢやない、長者町の私の家の者が皆んな殺されかけてゐるんです」
愛嬌もので、少々は嘘つきであつたにしても、長者町の俵屋といへば、下谷一番といはれた身上、その孫右衞門の娘
「知つてるとも、長者町の貧乏神――」
長者町へ入ると、向うに見える一劃、それは俵屋の大きな構ですが、その中
眼、いかにも繪に描いた貧乏神のやうな感じです。長者町の貧乏神と言はれたのは、その強慾非道さのせゐばかりではなかつたで
をさういつちや惡いけれど、あれはケチで剛情で、長者町の貧乏神といはれた人ですもの?」
江柄三七郎は、船を何處かへ寄せて、夜中に長者町へ歸れないこともないわけですが、それはしかし、俵屋へ忍び込んで、お
を過したとすれば問題はなくなりますが、淀橋から長者町へ飛んで行つて、すぐ引返したとすると、草鞋が無事な道理はあり
平次は機嫌よく迎へました。長者町の俵屋の手代金之助は、お靜に案内されて、部屋へ通つて來
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「箱根へ湯治に行つた知合ひからお土産に貰つたのだよ、昔々、朝鮮
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と言ふのかえ、そいつは結構過ぎて、そのまゝぢや八丁堀の旦那方も受取つては下さるまいよ」
助けてやつて下さい、今日中に口書きを取つて、八丁堀へ送ると、お神樂の清吉の野郎があつしの前でフヽンと鼻を鳴らし
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ことですが、二三日前には、朝の味噌汁に、石見銀山を投り込んだ者があります、幸ひ曲者は鍋を間違へたので
「石見銀山を白粉の包紙に包んだのを、下男の五助が庭で拾つたこと
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湯島の吉は、さう言つて、ピタリとお粂の顏を指すのです。
平次は八五郎と湯島の吉を追ひやると、母親のお春と、たつた二人、氣まづく相對
「湯島の吉もさう言つてゐましたが、お玉は何んで殺された
「へエ、湯島の吉はどうします」
は、八方から報告が集ります。淀橋の叶屋にやつた湯島の吉が、巾着頭を振り立てて歸つたのは二日目の晝過ぎ。
湯島の吉は草臥儲け見たいな顏をしてをります。
平次は湯島の吉の子分に訊きました。
「心細いなア、湯島の吉の野郎も、内儀の身許を洗つて來ると言つて、木更津まで
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、飛道具まで用意してありました。まして平次の時代の江戸の大分限、わけても現金を扱ふ商賣の俵屋が、戸締りに手ぬかりのある
「江戸は目の前だが、草臥れた顏を見せたくねえ、一と晩厄介に
江戸は鼻の先と言つても、この頃の淀橋はまた田舍も同樣、旅籠屋
は、中年近い醜い女、平次はそれをからかひながら江戸から百里も離れたやうな心持で、晩酌などを申しつけます。
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、親類方を集めるのだと言つて、目黒から川崎、神奈川の方まで手わけをして回り、明日でなきや歸らないさうだから、この
は身動きも出來ず、手代の金之助と下男の五助は、神奈川まで親類回りに出かけて、現場に顏を出したのは、寢卷姿のお
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「八王子を出たのが遲かつたので、淀橋へ來ると晩くなつてしまひ、掛を集めて大金を持つてゐるので
大金を持つてゐるので、夜道は物騷だから、淀橋の叶屋で泊つて、柄にもなく一杯呑んでぐつすり寢込んでしまつて
「ほかに用事がなきや、御苦勞だが淀橋まで行つて、叶屋で昨夜のことを訊かしてくれ、金之助の言ふことに
引揚げた平次のところへは、八方から報告が集ります。淀橋の叶屋にやつた湯島の吉が、巾着頭を振り立てて歸つたのは二
「本人の言ふ通りで、淀橋へ行くまでもなかつたやうで」
下谷まで伸せば伸せるほど陽があるにも構はず、淀橋で一と晩過したんださうですよ、尤も金之助は二十歳そこ/\の
一方は錢形平次、淀橋の叶屋に着いたのは、その日の夕方でした。
江戸は鼻の先と言つても、この頃の淀橋はまた田舍も同樣、旅籠屋も至つて粗末です。案内してくれた係り
で一夜を過したとすれば問題はなくなりますが、淀橋から長者町へ飛んで行つて、すぐ引返したとすると、草鞋が無事な道理
「淀橋にゐる筈の金之助が、どうして下谷で人殺しをしたんでせう
下谷の長者町に歸り、人を殺して曉方までに淀橋の叶屋へ、また駕籠で戻つたのだ、草鞋が切れなかつたのは
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會議に、親類方を集めるのだと言つて、目黒から川崎、神奈川の方まで手わけをして回り、明日でなきや歸らないさうだから
「目黒から川崎へ回つた時も、同じ術さ、もう一つ金之助は本來女だから、
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名前はお粂、下谷長者町の金貸俵屋孫右衞門の娘、凄いほどのきりやう、浮氣で
、お前は親分に岡惚れをしてゐるさうぢやないか、下谷中の評判だぜ」
であつたにしても、長者町の俵屋といへば、下谷一番といはれた身上、その孫右衞門の娘のお粂が、冗談
「藝人を情夫に持つて、下谷中の評判になり、親に勘當されたことも御存じでせう
ないらしく、帶を締め直して麻裏を突つかけて、押し並んで下谷長者町に向ひました。
手代がやつて來て、八王子へ行つた戻りだが、下谷まではとても歸れさうもないから、泊めてくれと、階下の六疊に
出しては、新宿へ遊びに行つたんださうで、下谷まで伸せば伸せるほど陽があるにも構はず、淀橋で一と晩
娘の、始末の惡い女であつたにしても、下谷一番の身上と言はれた、俵屋の先代の娘には違ひなく、
「下谷一番のお轉婆娘か」
「ツイこの間、下谷二長町の俵屋の手代が、八王子歸りに泊つた筈だが、その
翌る朝、下女のお徳は、下谷中一パイに響くほどの悲鳴をあげたのです。
「おや、八五郎兄哥か、下谷は錢形の親分の繩張りだが、錢形がゐなきや、俺が
八五郎は小粒を懷中に押し込んで、下谷に向ひました。それから日が暮れるまで、平次は所在もなく暮し
お靜の心配さうな顏を後に、下谷長者町に向ひました。
「淀橋にゐる筈の金之助が、どうして下谷で人殺しをしたんでせう」
、新宿へ遊びに行くことにして、駕籠を飛ばして下谷の長者町に歸り、人を殺して曉方までに淀橋の叶屋へ、
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神田お臺所町、これから親分の錢形平次の家へ朝詣りに行かうとい
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た。が、あいにく金之助は前の日から、貸金の取立てに、八王子まで行つてまだ歸らず、下女のお徳は持て餘して、姪のお
どんは、明日の晝頃でなきや戻りませんよ、八王子の千人同心を、十軒ぐらゐは歩かなきやならないが、この
數も多かつた上に、極めて小祿で、川柳に「八王子ガタガタするがよつく賣れ」などといふのがあり、ろくな刀も買へなかつた
そのころの八王子同心は、數も多かつた上に、極めて小祿で、川柳に「八王子
「八王子を出たのが遲かつたので、淀橋へ來ると晩くなつて
から、顏見知りの俵屋の若い手代がやつて來て、八王子へ行つた戻りだが、下谷まではとても歸れさうもないから、泊めて
「何んにもありませんが――八王子で集めた二百兩の金は、小粒と小判を取りまぜて、物騷だ
があるさうで、俵屋は先代から三月に一度ぐらゐは八王子へ金を集めにやるさうで、金之助も孫三郎も、よく顏を知つ
「八王子の百人同心に、細いが口數の多い貸しがあるさうで、俵屋
「ツイこの間、下谷二長町の俵屋の手代が、八王子歸りに泊つた筈だが、その時出たのは、お前ぢやなかつたか
實は金之助に良い嫁がきまりかけてゐるんだが、八王子へ行くと言つて飛出しちや、新宿あたりで流連をしてゐる樣子だ、
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堪へられねえ――と言つて、毎晩拔け出しては、新宿へ遊びに行つたんださうで、下谷まで伸せば伸せるほど陽が
てゐるんだが、八王子へ行くと言つて飛出しちや、新宿あたりで流連をしてゐる樣子だ、何處のどんな女が深間なのか
實は素面も同樣で、裏の窓から拔け出して、新宿へ遊びに行つたといふのだらう――それはもう、良くわかつて
金之助が本當に新宿で一夜を過したとすれば問題はなくなりますが、淀橋から長者町へ
を呑んで寢たと見せかけて、酒を灰吹に捨て、新宿へ遊びに行くことにして、駕籠を飛ばして下谷の長者町に歸り
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「品川の沖か、寵の中か、いづれそんなところだ――幸ひ縮緬は
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の親類會議に、親類方を集めるのだと言つて、目黒から川崎、神奈川の方まで手わけをして回り、明日でなきや歸らない
「目黒から川崎へ回つた時も、同じ術さ、もう一つ金之助は本來女
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現に、私がこの眼で見た、半世紀前の東京の下町の大金持でさへ、雨戸の内側に通しの大閂をはめ込み、
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子刻(十二時)前に歸しちやならねえよ、上野の鐘を數へて子刻過ぎたら、お前も一緒に歸つて來るが
爽やかな夜風が襟に吹いて、上野の鐘が頭の上で鳴るやうに、九つを告げます。その最後