銭形平次捕物控 076 竹光の殺人 / 野村胡堂
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八丁堀の與力が出役するのは、餘程の大捕物で、いづれは殺された
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「二十七でございます。生れは下谷で、へエ――」
「下谷は何處だ」
「それから、もう一つ、あの藤助と言ふ野郎は、下谷二長町の鑄掛屋の伜ですよ」
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十八九の娘、――これは、殺された主人福島嘉平太の一粒種で、お頼といふ美しいの。その側から、慰め兼ねて
殺された福島嘉平太はまだ五十そこ/\、武藝で鍛へた身體は、鐵で
「福島樣に間違ひがあつたさうだな」
死んだ人の事を惡く言つちや濟まんが、あの、福島嘉平太といふのが大嫌ひでな。高慢で頑固で、けちで」
「呑む、打つ、買ふの三道變だ。――福島といふ人、弱い尻でもなきや、あんやイヤな奴を使つ
「福島嘉平太を御存じで?」
み出して逃げうせ、その爲、盜賊詮議といふ名義で、福島樣も私の兄も永の暇となりました」
「三年前まで、西國のさる大藩に仕へ、福島樣は勘定方、私の兄は御金藏の番人をいたして居りまし
三つ、一つは殿御手筥に、一つは福島樣手許に、一つは兄が持つて居りましたので、お互
「兄は福島樣を疑ひ、福島樣は兄を疑ひ、二人は力を併せて盜賊を詮議する氣もなく
「兄は福島樣を疑ひ、福島樣は兄を疑ひ、二人は力を併せて盜賊を
「福島樣は幸ひ御裕福で、三年經つてもお困りの樣子も
「福島樣の御友人で、その頃國許を退轉した方でございます
福島家では笹野新三郎の許しを受けて、葬ひの支度に取かゝりまし
「變なことを伺ひますが、福島家は裕福でせうか」
「不思議なことがあるものだよ、私も福島家には三年五年食ひつなぐ金があるものと思つて居た
頼殿と別懇にしてゐたし、それに私と福島殿とは碁敵だつたからな。――性が合ふと言ふものか、
「御金藏破り、福島嘉平太殺し、觀念せい」
「何? 御金藏破りは判つて居るが、福島嘉平太殺しは俺の知つたことではないぞ」
「大縮尻だよ、八。福島嘉平太を殺したのは、どうも岩根半藏ぢやねえ」
寶物を盜んだのは、岩根半藏に相違あるまい。福島嘉平太はそれを嗅ぎ付けて跡を追ひ、星野門彌は嘉平太を疑つてそれ
「狸穴に落合つて暮すうち、福島と岩根は折合をつけた。藤助といふ鑄掛の心得のある下男にタガネ
引入れて藤助に五十兩か百兩の手間をやつて、福島嘉平太を殺し、三千兩一人占にする事を考へた」
「所が、岩根は福島嘉平太に半分やるのが惜しくなつた。藤助を惡企みに引入れて藤助に
火口と硫黄をつけて飛ばし、屋根の上に射込んで、福島嘉平太をおびき出し、屋根の上の怪し火を見窮めるところを生垣立と板
の白状で、ガラツ八もよく知つて居ることです。福島嘉平太と岩根半藏は、甲乙のない使ひ手で、正面から切り結んでは
の穗先が出て、一寸一分の狂ひもなく、福島嘉平太の心の臟を貫いた。――藤助は豫ての打合せの通り
はポツポと燃えてゐる、――あの晩藤助は主人の福島嘉平太をおびき出し、生垣にピツタリ身體をつけるやうにして、屋根の上
た奴の仕業かも知れない。いづれにしても、福島嘉平太に深い怨のある奴の仕業だ。たゞあの晩、岩根半藏が家
聽きした奴の仕業だ、――どうかしたら、福島嘉平太を殺すのを、半藏がいやになつたと見拔いた奴の仕業
のも、後で思ひ合せると跡部滿十郎で、半藏が福島嘉平太殺しを思ひ止つて三千兩を山分けにする氣になりつゝあること
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五日、平次はこれ程の手柄にも慢ずるどころか、神田の家に引籠つて、人に顏も見せなかつたのです。