巴里 高円寺 銀座

は巽九八郎の友達と言うわけではありませんが、巴里に居る頃二、三度逢った縁故があるのと、巽の旨を

「サア、五十銭、この三脚が五十銭、これでも巴里で買って来たんだから、たった五十銭は可哀想だ、もう一声―

がすむと、今度は着物になります。ビロードのルパシカ、巴里仕立てのタキシード、お召の襤袍、そんなところは無事でしたが、お仕舞

アトリエは高円寺から五、六丁入ったところで、木立の中に赤い屋根か何ん

痛々しさを救ってやろうと思いましたが、此の辺から高円寺の通りまでは、歩くより外には辿り付く方法が無いのです。

高円寺の停車場近くなった頃、

一番困ったことは、高円寺の通りの近くではあり、人の出盛る時分で、此の掛合を繞って

一番大事だ、すべてを妙子さんの意志に任せよう、私は高円寺の方へ行く、君は其処に立って居るなり、家の方へ帰る

。二人を見捨てたような心持で、後を見ずに高円寺の通りの方へ十歩ばかり進んだのです。私は一体、妹に

言い、もう一度フランスへ行ったとも言い、或る人は銀座のカフェーで逢ったとも言いますが、どれが本当なのか、先ず

ものは、思いの外尤もらしい証拠を提供したがるものですから、銀座を歩いて居たというのも、どうも信用する気にはなれない

からつれ出したのではあるまいか、その証拠には、銀座を二人で歩いてるのを見た人がある――と言う人もあり