笑う悪魔 / 野村胡堂
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だよ、何? 大事件がある? 何処だ、番町、能谷邸に、――僕に直ぐ来いと言うのか、よし行くぞ、
番町の屋敷町にしては、思いの外建て込んで、奈々子の部屋の西側、小さい窓
居さえすれば、社の仕事の隙を見付けては、番町の病院に見舞に行って居たよ、――お蔭で有楽町の花屋が、
美保子が傷の治療をして居る番町の病院に入ると、中は何んとなくソワソワして、医者も看護婦も落着か
その晩、番町の熊谷三郎兵衛の邸に、三度目の襲撃がありました。
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「兄貴は出張だよ、名古屋から大阪へ廻って居るんだ、明日あたりは帰って来る筈だが――
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「兄貴は出張だよ、名古屋から大阪へ廻って居るんだ、明日あたりは帰って来る筈だが――」
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社会部次長の千種十次郎の姿が、その晩の東京ポストの編輯室に見れないのは、まさに年に一度の奇蹟だったの
「兄貴は東京一番の御馳走にあり付いて居るよ」
と異名を取った男でしたが、今では若い乍ら東京ポストの社会部では良い顔で、時には千種十次郎の代りに、
て、特種取りの名人で、新聞記者としては、東京で何人と言われた腕達者だったのです。
の婦人部員に訊いて見たとしたら、二人は東京ポスト社中の、前借二大横綱で、まともに算盤を取られると、向う
会計の女史が下らない事を言い触らすもんだから、俺は東京ポスト社中のやくざ扱いだ」
十、その鉛筆を取ってくれ、――モシモシ、此方は東京ポストですがね、モシ、モシ、え、僕は早坂――そちらは、
美保子という世にも優れた麗人を加えたことと、東京ポストの社会部次長で、若い腕利きの新聞記者、千種十次郎を交えたの
東京ポストの社会部次長千種十次郎は、アルコールと空世辞と、豪傑笑いと嘘比べ
「兄貴はどうした。東京ポストの千種十次郎ですよ」
中へ、熊谷邸の玄関から飛込んで来たのは、東京ポストのヴェテランで、足で種を採るから「足の勇」という異名
「これは失礼、東京ポストの早坂勇ですよ、――名刺はこれ」
寄せ付けないのが捜査の常識でしたが、此場合は、東京ポストの社会部次長の千種十次郎が、客の一人として熊谷邸に
わけではなく、これは刑事中のインテリとして、東京の一流の記者達に交友を持ち、仕事の合間合間に此処へやって
還るが、千種君は本当に品行方正かい、――東京ポストの社会部長たるものが」
「兄貴が東京に居さえすれば、社の仕事の隙を見付けては、番町の病院
寒い風と共に、廊下から飛込んで来たのは、東京ポストの名記者、社会部次長をして居る、噂の千種十次郎でした
つかないのかな、ピカピカするようなお嬢さんを一人、東京が広くたって、そう何時までも隠して置けるものじゃない」
「東京ポストの千種十次郎君が、それ位のことに気がつかない筈は無い
綱を美保子さんが外してやったことになる、――東京ポストの千種十次郎君ともあろう者が、これ位の矛盾に気がつか
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眼を挙げました。七つ下りの背広、襟飾が神田っ児の旋毛位に曲って、モシャモシャと無精髯の生えた顔は、思い
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なく、何んの仕合せか、花房一郎と千種十次郎は、銀座の呑屋で一緒になったのがきっかけで、十年来の親友であり
銀座裏のカフェで、その頃一番清潔で、家庭的な明るさを持った「
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の病院に見舞に行って居たよ、――お蔭で有楽町の花屋が、時々総仕舞にされる」