鎌倉 江戸 三崎 江の島 日本橋 神田 品川 隅田川

「いえ、一緒に参りました。が、鎌倉で手間取って皆さんから一と足遅れ、片瀬へ着く途端に桟橋が流れて

さに、変り果てた顔形を幸い、幽霊のように、江戸へ舞い戻った人間でございます」

か解りません――私はそれを知りたいばかりに、江戸で半歳苦労いたしました」

と、大島へ持って行って、漁師に世話を頼んで江戸へ帰ったそうでございます」

顔を見た千之助は、本名を名乗ることも、しばらくは江戸へ帰ることも断念してしまったのでした。

達者になって江戸へ帰って、自分の眼でお新の顔を見て、その貞烈を見抜い

村人に礼を言って、再び御用船の厄介になり、江戸へ帰ったのは半歳前。

を聴き、番頭の要助さんと一着に、早駕籠ですぐ江戸へ取って返したようなわけでございます」

、店構えから住居の造作、細々した調度までその頃の江戸の大町人らしい贅を尽しております。

――災難に逢う前の男っ振りも評判でしたが、江戸の若い娘達が、丸屋の長次郎の方により強い魅力を感じたのも

「徳力屋の千之助が、生きて江戸へ還って来たが知ってるだろうね」

ございました。月に一度の大島通いの御用船が、三崎の沖で拾い上げて、まだ呼吸があるようだから可哀想に捨てもなるまいと

「江の島の崖の上から突き落された時、途中の木にも岩にも打っつかり

「江の島で崖から私を突き落したのは一緒に泊っていた、従兄弟の吉五郎と

「江の島へ一緒に行ったのは、お前さんと、長次郎と吉五郎と要助の四人

が流れて渡れないと聞かされました。仕方がないから江の島を眼の前に見ながら、顔馴染の片瀬の小磯屋――女将がお世辞もの

「そいつは面白い。江の島へ行く時、幾ら金が入っていたか聞いたろう」

ぬ」と言い張っていた佐七も、ガラッ八が片瀬から江の島を調べて、三日目に帰って来ての報告に、顔見知りの片瀬

がないと解った上、去年二百十日の翌日の晩、江の島の猟師の家を叩き起し、小判一枚投り出して泊めて貰った、左

で断られたのを根に持ち、一と足おくれて江の島へ入って、後ろからすぐ桟橋の落ちたのを幸い夜の闇に隠れて

、それっきり死骸も上がらなかったという事件は、当時神田日本橋かけての噂になったことを、平次はまざまざと記憶していた

も無理はありません。これは美しい人達の多い神田日本橋かけても、比ぶべきものがあるまいと思うほどのきりょうです。

れ、それっきり死骸も上がらなかったという事件は、当時神田日本橋かけての噂になったことを、平次はまざまざと記憶してい

「御免よ、神田の平次だが、主人にちょいと逢いてえ」

「あ、神田の親分さん」

のも無理はありません。これは美しい人達の多い神田日本橋かけても、比ぶべきものがあるまいと思うほどのきりょうです。

そのまま、品川の方へ急ぐ平次、佐七は二の句も継げずに見送りました。

「私はもう一度隅田川へでも飛込もうと思いました。――あれほど恋い慕って、毎日毎日、