銭形平次捕物控 242 腰抜け彌八 / 野村胡堂
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「其処へお前が乗込もうというのか。大江山に乗込む気で行くのがいい、怖いぜ」
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ね。――たまには行って見て下さいよ、両国は江戸の繁昌を集めたようなもので、年一度と言い度いが、実は
「十手捕縄には仔細は無いが、江戸の色男の沽券に拘わりますよ」
、充分に面白がって居る様子です。言うまでもなく、江戸の町風呂は早くから男女をわけて居りましたが、まだまだ脱衣場の方は僅かばかり
、朝詣の老人などが、健康な声を掛け合って、江戸の眠りを覚まして居ります。
表裏の違いのはなはだしさが、明治の頃まで残った、江戸の町の秘密だったのです。
、その身分から家庭までも失った文学青年が、その頃江戸名物の一つであった、遊女や芸子などよりは、遥かに遥かに卑しく
造酒助は町内の衆と旅に出て、間違いもなく江戸には居ませんよ」
風が爽やかに衣袂に薫じて、狭い狭い路地にも、江戸の裏町らしい活気は漲ります。
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「親分、近頃は滅多に両国へも行きませんね」
「行かないよ。俺が両国へ行くのを、お静がひどく嫌がるんだ。昔の朋輩が多勢居るところへ、亭主
らねえ遠慮ですね。――たまには行って見て下さいよ、両国は江戸の繁昌を集めたようなもので、年一度と言い度いが、実は一と月も見
「呆れた野郎だ。――両国が変った話だろう」
を言って、一生苦労をしても※があがらないと覚って、両国の広小路に三軒分もありそうな水茶屋を開き、御贔屓の檀那方の後押しで、
「巴屋の店は両国広小路にありますが、葭簾張の浅間な店で、夜は泊るわけに行きません。そ
送って居るが、腰抜け彌八それを良いことにして、昼は両国広小路の巴屋で、温かい茶を飲んで半日粘り、夜は夜とて――」
だが、男を男とも思わないところが面白いんだそうで、両国では先ず人気者でしょうね」
「もっとも、親は諸国遍歴の六部でした。両国で行倒れになった時、土地の人が六つ七つの娘を拾って育て、年頃になった
。金のかかって居るのを、次々とこう殺されちゃ、私も両国の水茶屋をやって行くのが恐ろしくなりました」
った、品の良い顔立は、お萩の可愛らしさとは又別に、両国広小路に、名物の一つに数えられたほどのことがあります。
知らない顔も出来なかったでしょう。銭形平次の顔は、両国あたりへはよく売れている上に、先頃のお萩の殺しで、一度は八五郎に縛ら
お房を刺し、墨を塗ってある用意の桐板で穴を塞いで、両国へ回って血だらけの脇差を川へ捨てたことだろう」
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「しまった。浜町河岸か、両国橋だ、行って見ろ」
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