湯島 雷門 江戸 神田明神 川崎 谷中 日本橋 上野 品川 神田 草加

たのも、多分こんな姿だつたでせう。谷中や湯島、芳町あたりの蔭間茶屋にも、こんな艶姿の少年が養はれてゐた

觀音樣にお詣りした歸り、雷門へ出ると、人混みの中に大變な騷ぎが始まつてをりました。

場所なり日和もよし、物好きでハチきれさうになつてゐる江戸の彌次馬は、事件を十重二十重に圍んで、八五郎の蠻聲でも

自ら首領になり、海道筋を荒し拔いた上、近頃は江戸に入つて、押込強盜を働いてゐるといふ噂でした。

山之助はそれから間もなく、知邊を尋ねて江戸に入り、新鳥越の呉服屋、越中屋金六といふのに奉公して、親の

で頼るところがなくなり、一人旅の苦勞を重ねて、江戸の新鳥越に、兄の私を訪ねて參りました。それはツイ二

「つく／″＼江戸は狹いと思ひました。今までは私の方から――耻かしいことですが、

、貯へも路用もあるわけはなく、一人の妹を、江戸へ留め置くことも、もう一度濱松へ歸す當てもございません」

彼岸過ぎの江戸はめつきり涼しくなつて遊びにも仕事にも、申し分のない日は續き

はありません。何々五人男といふ群盜が、江戸の綱紀の亂れに乘じて、勇侠者流のやうな顏して

團でしたが、二、三年前東海道を荒し拔いて江戸に入り、それから引續き諸人の恐怖と迷惑の種子になつてゐた

人相がわかれば、黒雲五人男だつて、呑氣に江戸の往來を歩いちやゐられまい」

が、由比正雪の一味が、神田上水に毒を投じて、江戸の人心を攪亂し、謀叛を企てて徳川幕府を倒さうとしたことが

的に取締りが出來てゐる場所は別として、一般江戸の町の寺や社で起つた事件は、民事的なものは別とし

民事的なものは別として刑事上の事件は、江戸の治安を背負つて立つ、町奉行配下の與力同心に任せ、寺社の係りは

ぽくて、物の道理もわからないのが、この時代の江戸の市井に、幾多の物語と傳説とを作つたことは事實で、芝居

とんだ濡衣を着なきやならないんだ、――いつか江戸を荒し廻つた強賊の『疾風』が、僞の中氣病みになつて

は顏を少し緊張させて、默りこくつて、神田明神の境内へ入つて行くのです。

しますよ。癪にさはることに昨日友達五六人と川崎へ行つて、一と晩飮み明かして、朝がけに歸つて來ると、

で見かけたのも、多分こんな姿だつたでせう。谷中や湯島、芳町あたりの蔭間茶屋にも、こんな艶姿の少年が養はれて

の兄が奉公してゐる越中屋といふのは、もとは日本橋で相當の店を開いてゐたが、主人の金六が中風を患つて

「それは御丁寧で恐れ入ります。實は晝過ぎ日本橋を出て未刻過ぎ申刻（四時）近く參る筈でしたが

「お早うぢやないぜ、八。先刻鳴つたのは上野の巳刻（十時）ぢやないか」

で、町方は口を出す權利さへなかつたのですが、上野の山内のやうに、山同心がゐて、自治的に取締りが出來て

の書類の中から、いつぞやお前に追はれて、品川沖で海の中に沈んだ兇賊『疾風』（『八人藝の女

兇賊を働いた末、お前に見出されて船で逃げ出し、品川沖で水死したといふことであつたな」

を盜み溜め、それを俺に邪魔された上、品川沖で水死をしたことがあるが――その後日物語さ。お比奈

は顏を少し緊張させて、默りこくつて、神田明神の境内へ入つて行くのです。

からと引取つて行つたさうですよ。尤も、場所は草加で、少し遠いからわからなかつたわけで、あつしが一度見たやうに思つ