箱根 八丁堀 湯島 江戸 神田明神 金沢 神田

「遠縁の奉公人でしたよ。十二三年前、箱根へ旦那のお供をして行って、崖から落ちて大怪我をして、

――検屍が済んだら、早く引取らせるがよい。もうすぐ八丁堀の旦那方が見えるはずだから」

投足の労でした。わざと神田を避けて、大廻りに、八丁堀へ引いて行き、とうとう恐れ入らせてしまったのは翌る日の朝。

のかと思うと、真一文字に妻恋坂を登って湯島の方へ――

言うのはいちいち本当です。三河在から、万歳の太夫で江戸へ来たというのは、世間の悪口にしても、ともかくも、ここ

と三十年、今では万両分限の一人として、江戸の長者番付の前頭何番目かに据えられる嘉兵衛ですが、慈悲善根の心がけが

ない、日傭取だったそうで、――文吉と一緒に江戸へ出て来て、昔は兄弟分だったそうですが、いつの間にやら

で十二三両は恵みましたが、――それが江戸の長者番付にのる万両分限のすることでしょうか、――私はたったそれだけ

行きました。そこはお今母子の知合いの家で、神田明神様の宵宮の賑わいを抜けて、知合いの家へやって来たお今が

「明神様の境内から、金沢町あたりを歩いておりました。何しろこんなに賑やかですから」

三人は真っ黒になって飛んで行きました。金沢町の下駄屋のお袖、町は違いますが、お今、お三

のかかった下っ引全部を動員して、湯島一丁目から金沢町、御台所町、妻恋町一帯に網を張らせ、少しでも怪しい

行きました。そこはお今母子の知合いの家で、神田明神様の宵宮の賑わいを抜けて、知合いの家へやって来たお

専次は泣き出しそうでした。全く神田明神をめぐって人間の洪水のようなもので、その中を一刻泳ぎ廻っ

、平次にとっては一挙手一投足の労でした。わざと神田を避けて、大廻りに、八丁堀へ引いて行き、とうとう恐れ入らせてしまった

と、専次を奉行所仮牢に送って、もういちど神田へ引返しました。