加賀 江戸 京橋

右衞門の女房のお源を始め、お染の父親、加賀の紙問屋、二葉屋安兵衞、その他親類の人達や近所の衆

つと聽いて居ると、師走らしいあわたゞしさが、江戸の街々を活氣づけて、障子に這ひ上がる晝の陽ざしの中を、

「大丈夫ですか、隨分イヤな野郎ですよ、江戸にもあんな蟲が住んでゐるかと思ふと、あつしはもう何處か知らない

「京橋お弓町の雜穀屋、四方屋徳右衞門樣の若旦那徳太郎さんが、御新造

「それが、京橋から此處まで飛んで來るのは、誰の指圖だ」

にお縋りする外は無いと思つて、私の一存で京橋から飛んで參りました」

も、誰からも何んの指圖をも受けず、京橋から明神下まで飛んで來るのは、唯の奉公人には出來ないことです。

京橋お弓町の雜穀屋、四方屋の嫁のお染、嫁入りしてから二