八丁堀 箱根 深川 神田

ようやくほぐれたように笑います。近頃むずかしい事件というと、八丁堀の旦那方が、すぐ平次を差向けたがるのは相当岡っ引仲間の神経を焦立たせ

藤を送らせ、金六には別れを告げて、平次は八丁堀の役宅に、与力笹野新三郎を訪ねました。

尾張町から帰って来たガラッ八は、八丁堀の役宅門前で平次に逢ったのです。

「御冗談で――三月になったら箱根へ湯治に行く約束はしましたが、その話を小耳に挟んで、とんだ

わけてのお頼みだ、――お前も聞いたであろう、深川木場の甲州屋万兵衛が今朝人手に掛って死んだという話を――」

いると、なんて事を言やがるんだ。この万次郎は、深川一番の不孝者だが、まだ親殺しをするほどの悪党じゃねえ」

「八、手前が行くと目立っていけねえ、神田へ帰るがいい」