銭形平次捕物控 321 橋場の人魚 / 野村胡堂
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、吉原といふ不夜城を控へ、向島と相對して、今戸から橋場へかけて、なか/\の繁昌であつたことは想像に難くあり
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江戸の新聞は落首と惡刷りであつたやうに、江戸の諜報機關は、斯う
江戸の新聞は落首と惡刷りであつたやうに、江戸の諜報機關は、斯う言つた早耳と井戸端會議と、そして年中何處かで開か
橋場といふところは、一應江戸の場末のやうですが、吉原といふ不夜城を控へ、向島と相對して
も過ぎ、櫻も散り、佛誕會が近くなつて、江戸の町もすつかり初夏です。
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の場末のやうですが、吉原といふ不夜城を控へ、向島と相對して、今戸から橋場へかけて、なか/\の繁昌であつ
て居たが、息子の菊次郎はそれを嫌つて、向島あたりの凄いのに通ひつめ、父親の伊豆屋徳兵衞は腹を
「向島の凄いのは、あつしも見ませんが、許嫁といふのは、伊豆
それだけは言ひ兼ねた樣子です。恐らく若旦那の菊次郎が、向島とやらに居る女に貢ぐために持出したものかもわかりません。
「向島にお銀の茶屋といふのがございます。水神の森の中で、
しくするので、ついたまり兼ねて放埒に身を持ち崩し、向島のお銀さんとやらに通ひ出したやうで」
「向島へ行つて見ようよ。菊次郎はそつと夜中にぬけ出して、時々そのお銀と
が居ます。もとはお銀の好い人で、今は向島一帶を繩張りにして居る侍やくざですが、その男に訊いたらわかるで
八五郎は生れて始めての長い時間を經驗しました。向島の方から一艘の小舟が、灯もなく靜かに近づくのです。
裏から小舟を出して、すぐ庭の裏の川で、向島から泳いで來るお銀と逢引して居たのだよ。五百兩持出さ
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の潮入の池から笹舟のやうな小さい釣舟を漕ぎ出し、隅田川の眞ん中で引つくり返して、舟は兩國の中程の橋桁に引
「その水死した菊次郎さんは、隅田川に夜中に舟を出して溺れた樣子ですが、菊次郎さんは、よく舟
た樣子です。庭の池は潮入で、水門一つで隅田川に通じます。池には小さい釣舟がありましたので、それを漕い
られないので、庭の池から、水門をくぐつて、隅田川へ出た樣子です。庭の池は潮入で、水門一つで隅田川に
も消え、吉原通ひの猪牙舟の音も絶えて、隅田川は眞つ黒に更けて行きます。