銚子 大木戸 江戸 金杉 品川 東京 神田

の腰を折りました。話が面白かつたので、銚子は一向にあきませんが、四邊はすつかり暗くなつて、お靜は諦め

町内の若い者が五六人、スツカラカンになつて、高輪の大木戸を越すと、いきなり聲を掛けたものがあります。

引張るのです。高輪車町の巴屋といふのは、江戸の土産物も賣り、店では一杯飮ませて、中食も認めさせますが、

一昨日江戸を發つとき、巴屋へ押し上がつて、旅の前祝ひの大騷

忘れる筈はなく、相手のお六も、品川から朝立ちで、江戸へ戻つて來た賑やかな旅人の中から、八五郎の長んがい顎

、昨夜は一人も客がなく、――尤も此處は江戸の内と申しても、海道の入口ですから、泊りのお客は滅多にござい

などといふ種は、八五郎に言はれる迄もなく、江戸始まつて以來の珍捕物になりさうです。

の酌で、高輪の宿に一と晩を明かしたら、江戸のトバ口で蔭膳を三日据ゑられるといふ、川柳の馬鹿もある

「番頭の勘三郎さんのことですよ。あの人は、江戸一番のいけ好かない人だけれど、主人殺しの下手人にされちや可哀

男です。あの人が主人なんか殺せる筈はない。――江戸には何百人も何千人もの左利きかあります。現に、この家だけで

廻ると立派な旅籠屋で、土地も家作も持ち、車町から金杉へかけての、物持として有名な家でした。

「旦那が殺されたんですよ。金杉の竹松親分が乘り込んで來て、ギヨロギヨロ睨め廻して居るから、氣味が惡く

は、八五郎も忘れる筈はなく、相手のお六も、品川から朝立ちで、江戸へ戻つて來た賑やかな旅人の中から、八五郎

「竹松親分も言ひましたよ。三年前品川の問屋場に泥棒が入つて、役人を一人殺して千五百兩の御用金を盜

いとこさうだ』に『炭坑節』『トンコ節』から『東京ブギ』の類ひまで踊つたり唄つたり、あらゆる醉態を見せた一

お六はすつかり八五郎を甘く見てゐる樣子です。尤も、神田を發つたのは遲かつたにしても、馴染があるとか何

があると聽いて覗きました。見せて頂くと、神田へ歸つて、錢形の親分に、飛んだ良い土産話になります」

「その五人の樣子を、詳しく話して見るが宜い。神田で八卦を置いて、高輪の犯人を言ひ當てるのも、洒落れて居る

「飛んだことでしたね。お孃さんに泣かれて神田からやつて來ましたが」