銭形平次捕物控 275 五月人形 / 野村胡堂
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「番町の親類へ、――店が忙しくて徳之助さんは行けなかつたので、
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見ると、作人は直ぐわかりました。東洲齋榮吉といふ鎌倉町の人形師で――」
「鎌倉町から一と飛びに驅けて來ましたよ。錢形の親分のお膝元の
女房のお靜の切火を浴び乍ら、八五郎を促して鎌倉町に向ひました。
「まだ、鎌倉町の自分の家に居ります。父親が死んだ跡始末でせう。尤もお店から
を聽いて、驅けつけて來ましたが、先程鎌倉町へ戻つたやうでございます」
揃つて居たやうですが、手代の香之助どんは、鎌倉町の家へ夕方から行つて泊りました」
八五郎の方を振り向きました。心得た八五郎は、鎌倉町の東洲齋の住んだ家へ飛んで行つたことは言ふまでもありません
「何? 香之助は鎌倉町の家には居なかつたと言ふのか」
ですが、亥刻頃出かけて、暫らく經つてからまた鎌倉町へ歸り、夜があけてから、本町の店へ行つたさうです」
「その昨夜鎌倉町の家を一刻(二時間)もあけた相ぢや無いか。その間何處へ
女房のお光の着物を羽織り、お高僧頭巾まで冠つて鎌倉町へ行き、五月五日は皆んな留守と知つて、東洲齋を責めた
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それは間違ひがありません。今時あんな羽織を着るのは辰巳の藝者衆でなきや女藝人でせうよ。背の高い、――
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「先生の仰つしやる事は、石見銀山猫いらずらしいといふことで、晩酌のときたべた、雲丹の鹽辛がいけ
から、うんと盛られても氣がつくまい、――多分石見銀山かな」
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の見張つて居る明神樣の氏子は申す迄もなく、江戸の下町一帶は、まことに平穩無事な日が續いて居りました。
薫風に素袷の袂を吹かせて、江戸の風物は一番嬉しいときですが、仕事となると、町々の青葉にも、
兼ねた樣子でキメつけます。親方が殺された晩、江戸で一番下等な賣女を相手にした惚氣を、死骸の隣りでヌケヌケ言ひ
東洲齋といふのは、全くの江戸の職人で、きかん氣らしい中老人ですが、身體はまことに貧弱で
敵がある筈は無く、少し頑固ではあつたが、江戸つ兒らしい氣前の良い中老人で、誰とでもすぐ仲よしになれた
は小さい方、身の廻り調度もなか/\整つてをり、江戸の通人の一人として、近頃メキキメと評判の高くなつた男前です。
武家の出と、腹からの江戸の職人とは、矢張り反の合はないものがあつたのでせう。
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屋からの使ひで、平次は飛んで行きました。日本橋の目貫の場所で、繁昌して居る田島屋の店、無氣味な