根津 江戸 谷中 下谷 上野 目黒 神田

根津の喜三郎といふ顏の良い御用聞ですが、近頃ではもう、錢形

平次と八五郎は、根津の喜三郎に案内されて奧の部屋に通りました。店から居間、佛

家族といふのはこれで全部、平次と八五郎は、根津の喜三郎に案内させて、左して廣くない庭を一と廻りし

うちに形付きました。番頭の敬太郎は、その場で根津の喜三郎に縛られたことは言ふ迄もありません。

そんな事もあつたのであらう。江戸の町人達の芝居好きは、分別や思慮を越えての一つの道樂だ

で、この家へ婿に來ることになつたのだ。谷中と山下では、朝夕顏を合せるところで無いし」

ます。旦那はあんなに見えて、大層芝居が好きで、谷中から上野下谷あたりまで手を伸して、素人衆の芝居の好きな方を集め

貸席で素人芝居をいたします。その役者になるのが、谷中では番頭の敬太郎さん、山下の越後屋の三之助さん、それにお孃樣が振事

その歸り、谷中から神田まで、

「木更津に叔父が居ります。請人は下谷の遠い親類で」

はあんなに見えて、大層芝居が好きで、谷中から上野下谷あたりまで手を伸して、素人衆の芝居の好きな方を集め、毎年

旦那はあんなに見えて、大層芝居が好きで、谷中から上野下谷あたりまで手を伸して、素人衆の芝居の好きな方を集め、

聞と若旦那と、肩を並べて、三崎町の往來を、上野の方へ辿りました。春の陽は少し傾いて、薄寒くなりかけまし

「もう八年になります、――親は目黒で、百姓をして居りますが、私も二十五ですから、お暇を

その歸り、谷中から神田まで、