銭形平次捕物控 103 巨盗還る / 野村胡堂
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が昨夜人手に掛つて死んだつてね。――今朝八丁堀の組屋敷へ行くとその噂で持ちきりだ」
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それから下女のお北に逢つて見ました。在所は神奈川、年は三十、出戻りで不縹緻で、御飯を炊くより外には、あまり
が、奉公人の身許を殘らず洗つてくれ。房州と神奈川へは、下つ引きを出すんだ。宜いか、大急ぎだぞ」
ちやいけません。五日四晩、江戸から、房州、神奈川まで、下つ引と三人、夜の目も寢ずに搜した揚句――
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手を振りました。さうでなくてさへ、この二三年江戸の捕物は錢形平次一人手柄で、宜い加減御用聞仲間の嫉視を買
ガラツ八の八五郎は少しあわてました。二三年前江戸で鳴らしたお狩場の四郎。それは、一度錢形平次に擧げられて、
「さア判らねえ、お狩場の四郎が江戸へ入つて來たとすると、こいつは最初つからやり直しだ」
「いえ、江戸に出て居ります」
「兼松どんは江戸一番の正直者です。人なんか殺せる男ぢやございません」
もあるでせう。血の附いた着物を着て、江戸の町は歩けません。お照さんの部屋で物音のしたのは、
「茶にしちやいけません。五日四晩、江戸から、房州、神奈川まで、下つ引と三人、夜の目も寢ずに搜
狩場の四郎の怨みを言ひ含められ、四郎が死ぬと、江戸へ出て來て、柳原の借家に入り、宇太八は世を忍ぶために
のが宜い。お狩場の四郎の娘と知れては、江戸では住みにくからう」
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ありません。皆んな亡くなつた母親の形見です。母親は館山の殿樣の御殿に上つて、長い間御奉公したことがあるん
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「ね、親分、聞いたでせう。麹町六丁目の娘殺し」
つて、ぬく/\と榮耀を續けてゐる、麹町六丁目の櫻屋六兵衞一家。第二番目には、このお狩場
神田から麹町六丁目へ、決して近い道ではありませんが、物をも言はずに
二人は五日目で麹町六丁目へ飛びました。
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神田から麹町六丁目へ、決して近い道ではありませんが、物をも言は
を殿に、お照を中に挾んで、六丁目から神田へ引揚げるその日の平次は、晩秋の薄寒い夕映えの中に、本當に滿
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主人も氣が落着くでせうから、私は今晩中に八王子在の田舍へ歸ることにしました。――この通り」