本郷 江戸 宇田川町 上野 品川

「それから宇田川町から本郷まで、遠い道を一刻もかゝつて辿り着いたことだらうが、この田原屋

お祭で見染めて、宇田川町まで後を跟けて行つた上、本郷から毎日通つて、塀の節穴を覗いて暮したといふ罰の當つた

秋山佐仲の入智惠もあつたことでせうが、本郷で指折りの分限者、田原屋の嫁になる氣になつた」

音も聽えて來る戌刻半（九時）過ぎ、江戸の夜の情緒は、山の手ながら妙に艶めきます。

石も劍菱も袖振り合ふ――と言はれた江戸の街ですが、六十二萬石の大藩の主となるとなか／＼見識が

で、――秋山樣の仰しやる通りでございます。宇田川町を出たのは暗くなりかけた時分でございました。フト見ると、お

「それから宇田川町から本郷まで、遠い道を一刻もかゝつて辿り着いたことだらうが、この

「宇田川町から駕籠に附いて來た人達は、皆んなその路地の中に居た筈

六つ七つ。附け文をしたり、言ひ寄つたり、宇田川町の秋山さんの家のあたりを、毎日ウロウロする男が、五人も六人

「へエ、宇田川町を出る時から、そんな氣がしました」

ぎだ、――この春神明樣のお祭で見染めて、宇田川町まで後を跟けて行つた上、本郷から毎日通つて、塀の節穴を

平次は其處を宜い加減にきり上げて、宇田川町の秋山佐仲の浪宅に向ひました。

娘喜美の死體は、檢屍が濟むと直ぐ宇田川町に運んでその晩はそのまゝ、親類と近所の衆とでお通夜を營んで

「今晩、漸く暗くなつた頃だ。宇田川町の秋山さんの浪宅から、いよ／＼花嫁の行列が出ようと言ふ時――

「お前さん、もう上野の子刻（十二時）が鳴りましたが――」

のお喜美が殺されたのを調べたきや、芝か品川へかけて、五十人もの男を虱み潰しに洗つて見ろ、あの