銭形平次捕物控 110 十万両の行方 / 野村胡堂
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だけだが、ちよいと變ぢやありませんか親分。神田から番町へかけて、並ぶ者のないと言はれた上總屋音次郎が、死んで一
てはいけない。飯田町の上總屋、――神田から番町へかけても、並ぶ者がないと言はれた大分限の上總屋には
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でゐるに違ひありませんよ。公儀御用を承はつて日光山の御修覆まで引受けたこともある男ですもの」
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「石見銀山かな。――お孃さんの味噌汁にだけ入つて居たところを見ると
「仙之助の行李の中に、石見銀山の使ひ殘りと、少し血の附いた匕首がありました。へエ、
「石見銀山と血染の匕首を、仙之助の行李に隱したのは、賢いやうで
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八五郎は、またニユースを一つ嗅ぎ出して來ました。江戸の町々がすつかり青葉に綴られて、時鳥と初鰹が江戸ツ子の詩情と味覺
―親分に植木屋を始めて貰つて、あつしはそれを江戸の縁日へ持出して賣る」
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たそれだけだが、ちよいと變ぢやありませんか親分。神田から番町へかけて、並ぶ者のないと言はれた上總屋音次郎が、
「驚いてはいけない。飯田町の上總屋、――神田から番町へかけても、並ぶ者がないと言はれた大分限の上總
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「まご/\して居ると、市ヶ谷の富藏親分が、誰彼の見境もなく縛つてしまひますよ」
見付けたのは、山の手で顏を賣つた御用聞、市ヶ谷の富藏です。中年者の強かな顏には、さり氣ないうちに敵意
「市ヶ谷の親分、何にか大變なことがあつたんだつてね」
市ヶ谷の富藏は少し皮肉な調子で、ニヤリと平次を見るのです。
「市ヶ谷の兄哥、この仕掛は古いものぢやないぜ」
「市ヶ谷の親分が縛つて行きました」
「市ヶ谷の親分が仙之助を縛つて行くのも無理はないが、そいつは少し
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飯田橋中坂下の大地主、上總屋に驅け付けた時は、家の中
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「番頭さんは夕方から日本橋の御親類へ、仙之助さんは音松さんの出た直ぐ後で、矢張り町内