御前岳 備前国 江戸 岡山 金沢

「心願の筋があって御前岳の白山神社に御詣りする積りだが――」

を登ると御前平で、更に一千一尺、雲際に突入する御前岳の頂上に白山神社の本社があるのでした。

一、機巧、備前国岡山表具師幸吉というもの、一鳩をとらえて其身の軽重羽翼の長短を

江戸の商人という拵えで、陽に焦けた浅黒い顔、キリリとした眼鼻立ち

「お客様は江戸の方で、御存じないかも知れないが、白山はこの二十年越しいろいろ怪しい

見たが、凄いほど綺麗だったね、あんな女は、江戸にも滅多にはあるまいよ」

「江戸の生れで、清作と申します、ヘエ」

言っても宜いワ、清作と言って、取って三十二、江戸の生れだけれど、人間はそりゃ半間よ、可愛がってやって下さるわねエ

五兵衛に抜け荷を扱わせて、軍用金まで拵えて居ると、江戸では今にも軍が始まるような噂だ。いずれは木端微塵に吹き飛ばされる

、気を確かに持て、お役目が済めば、お前を江戸へつれて行ってやる、――加州領へ入ってから、いやな事ばかり

狐も猿も恋しくなる、それが人情だ、――尤も江戸の真ん中から来たこの私の眼にも、お前はこの上もなく美しく、

一、機巧、備前国岡山表具師幸吉というもの、一鳩をとらえて其身の軽重羽翼の長短を

お通の父は岡山の表具師幸吉で、享和の頃飛行具を発見し、人の作るまじきもの

の顔には言いようも無い不快の色が漲ります。岡山を追われてから三十年、この時はもう六十歳の老人でしたが

「金沢の山役人が、山の登り口を塞いで、里の者はたった一人も

女房は葭簾の外へ出て、金沢の方へと小手をかざすのです。

と浅尾の亡霊が、怪鳥となって加州侯を苦しめ、金沢に大火を起したという伝説がその頃、専ら北国に伝わって居た

旅人清作を引き摺るように物蔭に隠しました。間もなく金沢から来た一行八人の奉幣使が注連縄張った唐櫃を担がせて

若い旅人は茶店を出ると真直ぐに金沢の方へ帰ると見えましたが、実は藪をくぐり、木立を抜け

―今度は仕事が大きいから手伝いの人を捜しに私は金沢の城下まで行ったじゃありませんか、此処に関所なんか拵えて、大事

「おや、奥村の殿様、――金沢のお城下じゃ御重役か知らないが、此処へ来れば、私の方

、商売物の竹田人形師の器用な細工をあしらって、金沢の重役方に売り込み、殿様のお言葉まで頂いて、士分とやらに取り立て

「あまりの事に金沢の城下へ行って、じきじき殿様に逢って文句を言おうと思う私を、

も無理のないことですが、鶴次郎は、それを土産に金沢に帰り、士分に取り立てられた上、奥村主殿の娘里代をそそのかして許婚