鎌倉 極楽寺 江戸 関東地方 両国 奈良

琢堂――と読めるが、こいつは名人と言われた鎌倉の野沢琢堂だろう」

「親分、仏師の野沢琢堂は、去年の春鎌倉で死んでいますよ」

「鎌倉まで行って来たんだから、間違いはありません。――病気は中風

「鎌倉だよ。まだ分らねえのか」

。行先は分っているじゃないか、親の墓のある鎌倉だ」

は半分は駆け、半分は駕籠で、その日のうちに鎌倉に入っておりました。

出て、どこかで夜を明かせば、島吉の丈太郎が鎌倉へ着くのも早くて今夜だ。少し待ってみようか」

二三軒当って、琢堂の墓はすぐわかりました。極楽寺の切通しを少し行って、右へ登った林の間、二人はどんなに骨

それから十日ばかり経って、江戸はすっかり夏になりきった頃、ガラッ八の八五郎は、相変らず髷

「江戸から来る途中、チラリと親分の姿を見て、観念しておりました」

た。お前の顔も、姿も。――そしてこのまま江戸へ引っ返そう。お前もどこかへ消えてなくなるがいい。俺の前へ二度

彫物大工ですが、野沢琢堂は見識のある仏師で、関東地方に幾つかの傑作を遺しておりますが、この普賢菩薩なども、数ある

むと、いやに落着き払った八五郎を引っ立てるように、両国の方へ一散に飛びます。

推古仏は愚かなこと、唐土、朝鮮の古いのや、奈良、平安朝の芸術品、鎌倉期の雄健なものさえ一つなく、あるもの