本所 江戸 長崎 日本橋 浜町 駒込 両国橋

之進が、この二人のうちの一人を決定するために、本所の友人山ノ井金之助の宅で落ち合った帰り、つまらぬ口争いが嵩じた挙句、誘い

高禄も屋敷も、あらゆる権勢も剥ぎ奪られ、野良犬のように江戸の町に投げ出されて居りました。

「――この枕だ。これは拙者の先々代が、長崎奉行に従って彼地にあった時、異人を助けてその謝礼に貰っ

のうちでも御年配の方は、明治の中頃まで、日本橋の照降町に、桜井屋という、枕を専門に商う不思議な店のあっ

た。どちらも若くて、どちらも元気そうな青年武士、浜町河岸の朧ろの月下、二条の刃が春の夜風を剪って相正眼に

友人の宅で落合った帰り、何方から誘うともなく、浜町河岸の淋しいところに来て、斯う抜き合せることになったのです。

帰り、つまらぬ口争いが嵩じた挙句、誘い誘われて、浜町河岸に来たのはまことに運命的な成行と言う外はありません。

右太之進と、お綾を争って、ツイ鼻の先の浜町河岸に切結んだ時と同じように、それは桜の花片のハラハラと散る

驚くなよ、お綾殿の嫁入先というのは、駒込に小大名ほどのお屋敷を構えて居る、八千五百石の大身、大森摂

そのうちに、組頭伊奈長次郎の娘お綾は、駒込の大旗本、大森摂津守六十二歳の内室に納まり、この造化の大傑作

両国橋を一気に飛んで、二条の刃の中へ、パッと飛込んだのは

明瞭に意識し乍ら、秋月九十郎は、その夜の宿を両国橋の下に求める外はありませんでした。