銭形平次捕物控 252 敵持ち / 野村胡堂
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の背負ひ呉服屋になり、お里は事件落着後、故郷の九州に歸りたいと言ひ出しました。八五郎と叔母が、どんなにそれを引留め
向柳原の八五郎の叔母さんの家から、遠い/\九州への旅に上つたのは、五月も半ば過ぎになつてからの
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四月の陽は縁から雨落に這つて、江戸の櫻ももうお仕舞ひ、狹い庭に草の芽が萠えて、
人別は長崎の寺にあるさうで、父親と一緒に、江戸へ出たのが三年前、その父親に死に別れて、日本橋の大店へ、
から十日ばかり、八五郎の足は明神下に遠退いて、江戸の初夏は、漸く青葉の色も濃くなります。
その頃の江戸は、創業の殺伐な氣分が失せて、町人に大通や物識が輩出し
所爲と思ひ込み、父の敵を討つのだと申して江戸に參り、私をつけ狙つて、ツイ此家の裏に住んで居り
ものはまだ無かつた頃、大きい屋敷では、火事早い江戸の名物に備へて、塀外に天水桶か、でなければ、杉なりに積んだ
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家といふのは、俗に言ふ向柳原、正しく言へば佐久間町四丁目の裏地の、それも念入りに奧の奧で、突き當りには
なしも世辭も申分なく、人間の堅實さは、佐久間町中に響いてゐる程の褒めものです。
里といふのが臭かつたんだ。――お前を佐久間町の住人と知つて、身投げの狂言を書いて入り込み、蔭乍ら加納屋の
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「それが何より氣になりますよ。人別は長崎の寺にあるさうで、父親と一緒に、江戸へ出たのが三
「でも、怪しい事ばかりだぜ、八。長崎生れの人別の無い娘が、お前の家を選つて居候をしたり
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へ出たのが三年前、その父親に死に別れて、日本橋の大店へ、請人の無いのを承知で住み込んだが、主人に執こく口説き
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仕度をしてやつたことか、皆んなで送つて行つた品川の宿外れ、