北海道 東京

お関は好い機にして立って行って見ると、北海道へ久しく行って居た清川と云う、主人と親しく仕て居る男が、まだ

いつ東京からお出でなすったんです。

まして、久々で東京から来たのに手土産一つ持って来ない事も気を悪くさせる

東京ではこの頃どんな浴衣が流行って居ましょうね。

「ねえ※子さん、東京じゃあ今、

と思うと半分むしゃくしゃになってつとめて面白そうに高声で東京の事だの親類の子供達の噂だのをした。

のだけれ共、あんまりまとまりなく拡がった部屋なので、東京では三方を本箱で封じられた様に狭くチンマリした書斎に居つけ

そんなじゃ東京へでも出て一夏送ったら暑い暑いで死んで仕舞いますよ。

とか云うので、人だすけだと云って祖母が東京へは無断で出してやったのだった。

東京から云われて来たって云う事をね。

東京の家でもどうにか仕たいと云って居ますからと云って様子

祖母も気を揉んで居りますし、東京の家でもなるたけ早く極りをつけたいと云ってますから。

ながら年寄は非常にその熱心らしい調子が気に入って、東京の塩瀬のお菓子と云う因縁付きの取って置きの物まで食べさせたりした。

の様な地味な気持で三間もある様な手紙を東京の家へ出した。

八月も末になって居るので、もうじき東京へ帰らなければならないのに、思って居る事の一つもまとまらない

東京からは何とも云って呉れないので、もう十日程の先に

いつもの通り畑道を歩きながら、※子は東京からの手紙を見せた。