銭形平次捕物控 305 美しき獲物 / 野村胡堂
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から、その持參金でメキメキと身上を持ち直し、今では外神田から下谷へかけての、良い店になつて居りました。
つた。潰れかけた身上が直つたばかりでなく、近頃は外神田から下谷へかけて指折りの店になつた、――娘のお吉は氣性
「相模屋の隣りの大地主、下谷から外神田へかけて一番と言はれた、綺麗な女房を持つて居る男ですがね
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た噂などは一つもなく、手代の時松は、昨夜横川町の親類へ法事があつて行き、一と晩泊つて今朝戻つて來たこと
「第一番に、お前は昨夜横川町の親類の法事で出かけ、一と晩泊つて今朝歸つたと言つたが、
「横川町を出たのは宵のうち、――夜半に此處へ着いて、曉
たので、お孃さんは家の中へ、私は横川町へ戻りました」
尚ほも下つ引を二人走らせて、横川町の時松の親類と言ふ家に訊かせましたが、時松は店に用事が
と言つて宵のうちに戻り、夜が明けてから又横川町に來たといふ、時間の關係もピタリとして居りました。
、お吉が邪魔になつてならないから、――時松は横川町の親類の法事に行つたことにして、夜中に佐久間町に歸り、お
「それから、横川町の親類の家から拔出す時も、あの男は大手を振つて出て居る
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「親分、ちよいと江戸をあけますがね」
「江戸をあける?――大層なこと言やがるぢやないか、日光へ御代參にで
「からかつちやいけません。江戸をあけると言つたところで、ほんの三四日。町内の氣の合つたの
「あつしは御用繁多で江戸を拔けられず、相模屋の若旦那は御新造がやかましくて、物詣での町内附き合ひも
、二つ三つお辭儀をしました。久し振りに江戸を離れて、片瀬から江の島とのし廻し、炭坑節とトンコ節の大氾濫で
、山の手で親分扱ひをされてゐるボスの親方は、江戸で高名な御用聞の平次を、物の數とも思つては居ない樣子です
夜通し江戸へ飛んで來たにしても、八五郎のあわてやうは尋常ではありませ
、あとは宿で呑んで居ましたよ。すると、江戸からの急の使ひで、相模屋の御新造が殺されたといふ手紙でせ
夫――相模屋の若旦那の榮三郎は、すぐ仕度をして江戸へ歸りました」
の洪水だ、――訊いて見ると、一刻ばかり前、江戸の人が通りかゝつて、喉が渇くからと、冷で一杯所望し
モロに折つたが、文句を言ふ隙もなく、俺は江戸の佐久間町のもので、同じ暖簾の相模屋を名乘る者だ。それもこれ
置いてくれと、小判を三枚抛出して、逃げるやうに江戸の方へ行つたといふことで」
「ところで、榮三郎はお前と一緒に江戸へ歸つて來たのか」
の方がお吉を殺してしまつたと聽いて、江戸へ引返すと見せて、戸塚から引返し、片瀬の宿で、醉つ拂つた多之助
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「どうした八、お前の留守に、お膝元の佐久間町で、飛んだ騷ぎがおつ始まつたぞ」
折つたが、文句を言ふ隙もなく、俺は江戸の佐久間町のもので、同じ暖簾の相模屋を名乘る者だ。それもこれも何ん
に乘つて品川まで通し、品川から駕籠を換へて、佐久間町の相模屋まで乘りつけたんですもの、口を利く遑なんかありやしません
町の親類の法事に行つたことにして、夜中に佐久間町に歸り、お峯の手引で、兄嫁のお吉を殺した、――と斯う
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入れなかつた、あつしと相模屋の若旦那の榮三郎が、それを江の島まで迎へて、三日ばかり海を眺め乍ら底拔け騷ぎをやらうといふ計略
この二人は、相談をして、そつと拔け出し、仲間と江の島で落ち合つて、相模藝者を總嘗めにしようといふ、謀叛を企てた
儀をしました。久し振りに江戸を離れて、片瀬から江の島とのし廻し、炭坑節とトンコ節の大氾濫でも喰はせようと言つた、
うちに、急の使ひをもらひましたよ。一度江の島を訪ねて、それから片瀬と聽いて廻つたとかで、思ひの外使は
に、外から入れるやうに窓の戸に細工をし、江の島へ行つて自分に疑ひのかゝらないやうにし、その留守に多見治は、
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「遊行寺の前を戸塚の宿の方へ拔けようとすると、道傍に一人の男が休んでゐる
は若旦那の顏を見て、おや旦那は一刻も前に戸塚の方へ行つて、間もなく、藤澤の先へ引返したやうでしたが
「戸塚から問屋場の駕籠に乘つて品川まで通し、品川から駕籠を換へて、佐久間
しまつたと聽いて、江戸へ引返すと見せて、戸塚から引返し、片瀬の宿で、醉つ拂つた多之助に仕掛けをして縊り殺し、
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その持參金でメキメキと身上を持ち直し、今では外神田から下谷へかけての、良い店になつて居りました。
。潰れかけた身上が直つたばかりでなく、近頃は外神田から下谷へかけて指折りの店になつた、――娘のお吉は氣性者
「相模屋の隣りの大地主、下谷から外神田へかけて一番と言はれた、綺麗な女房を持つて居る男
「待つてくれ、八、大地主の金持の、内儀が下谷一番綺麗な多之助は、何が不足で首なんか縊つたんだ。そんな
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「どうぞ此方へ、――まだ駒込の嫁の親も參りません。生憎伜は留守で、たまに嫁一人
「お父さん、駒込の父さんが――」
飛込んで來たのは、嫁の父親の駒込の長五郎といふ、良からぬ事で金を拵へたと言はれて居るが
「駒込のお父さん、飛んだことになりました」
駒込の長五郎は、其處に集つてゐる、家中の者の顏を見比べて
駒込の長五郎の舌は、遠慮もブレーキもきかなくなつて來るのです。
葬ひの仕度になりました。主人の榮右衞門は駒込の長五郎にカキ立てられた憤怒がなか/\納まり兼ねる樣子ですが、手代
兎も角も、平次は駒込の長五郎を誘つて庭につれ出し、あとは近所の人が寄つて、葬
「駒込の長五郎親分が、あんなところで言ひ合つちや、見つともないぢやありません
駒込の長五郎は、一流の達辯でまくし立てるのです。
で弱氣で、その上、嫁が死んでしまへば、駒込の長五郎からの援助が絶たれるので、何より身上が大事の榮右
取すがつて、男泣きの大泣きでしたよ。氣の強い駒込の長五郎――嫁の親父の、あの祿でもなしも、聟の榮三郎
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「戸塚から問屋場の駕籠に乘つて品川まで通し、品川から駕籠を換へて、佐久間町の相模屋まで乘りつけたんですもの、
「戸塚から問屋場の駕籠に乘つて品川まで通し、品川から駕籠を換へて、佐久間町の相模屋まで乘りつけた