江戸 両国 下谷 浅草 上野 品川

。天保十一年の晩春、十一代将軍家斉の治下で、江戸の風物は熟れた果物のように、甘酢ぱく頽廃し切った時のこと、

「両国の活人形に一枚差し加えて下さるまいかてんでさ、恐ろしく丁寧な口をきき

両国に見世物小屋を持って居る長次の許へは、時々飛んでもないものが舞い込み

「申すまでもなく両国の活人形は、宮川光遙先生が心魂をこめて作り上げた、十二ヶ月の年中行事

では御座いません。小紫の心持の届くように、どうか、両国の小屋の中に飾って、諸人に見せてやって下さいまし、宮川先生の十二ヶ月

「両国の活人形は大層な人気と聞いて、実は蔭乍ら喜んで居りましたが、あまりの

居りますが、打ち明けると、祭文語りから延し上げて、両国の小屋持になった長次、今では親分とか親方とか言われて居りますが、根が

私はあの人形を手離す気は無いのです。その証拠には、両国の活人形の中に出しても、私は決して分をくれともかすりが欲しいとも申し

小紫の人形の行方を探して、まる三日三夜、鯛六は両国から左衛門橋のあたりをさまよい暮しました。

四日目の夕方、両国の小屋の側にある水茶屋の軒下に佇んで居ると、水茶屋の娘が薄々事情を聞

入になろうとしましたが、越えて翌々日、南町奉行所へ両国の小屋に木戸番を勤めて居る、塩辛声の八と言う者が、恐れ乍らと訴えて出

それに、この人形の奇跡は両国界隈で一時評判になった事でもあり、木戸番の八は人形欲しさに入り込んで

何んとか話を聞いて見ようと思いましたが、下谷の辺に住んで居ると言う丈けで、誰もはっきりした所を知っ

ぬ首を切った粂の平内様は、自分の木像を浅草の地内に埋めて、毎日何万の人に踏み付けられ、罪業の消滅を

やがて子刻、上野の鐘が五月雨の空に籠って聞えて来ると、見馴れた場所柄と

を盗み取りましたが、追い詰められて九死一生と言う場合、品川の町外れの闇の中から出て、そっと救い出してくれた者があります