八丁堀 大阪 江戸 調布 金杉

最後の手段は、まだ八丁堀に留められてゐる久吉に逢つて、隱宅を飛び出してから、路地の死骸の

八丁堀の組屋敷へ行つて、係りの與力に事情を話し、その許しを受けて

娘はお袖と言つて、兄の彦太郎と二人は、大阪の名ある大町人の子に生れ、曾ては人にも羨まれる榮華も

から茶碗を取り上げ、それを持つて、もう一度故郷の大阪へ行つたといふのです。

つた――こればかりは眞物の、井戸の茶碗を抱いて江戸に下り、それを賣つて身を立てる代にするつもりでしたが、骨董屋は

賣れさうもありません。強氣の彦太郎もいよ／＼江戸には縁がないものと諦めて、古道具屋から茶碗を取り上げ、それを持つ

土地の人に大盡風を吹かせてゐたところへ、江戸の御用聞の八五郎が踏込んだのです。その金の中に、要屋

いや氣がさしたものか、暇を取つて在所の調布へ歸つたやうですよ」

「調布へ行つて、久吉がどんな樣子で歸つたか調べてくれ。五十兩と纒

八五郎を調布へやると、平次は、もう一度芝へ行きました。濱松町から神明一帶

ガラツ八が手代久吉を調布から縛つて來たのはその翌る日でした。在所へ歸つてすつかり氣を許し

言ひ終る山之助の言葉も待たず、御用聞の金杉の竹松は、死骸へ飛び付くやうに調べましたが、小判は愚か財布の中

金杉の竹松は、獲物を嗅ぎ出した獵犬のやうに飛びました。