モスクワの辻馬車 / 宮本百合子

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モスクワの辻馬車

冬凍った車道ですべらないようにモスクワの馬に、三つ歯どめの出た蹄鉄をつけている。新ソヴェトの滑らか

錠をかけたのは四角い大きな樺の木箱だ。それは明日モスクワから日本へ向って送り出されるべきものだ。――日本女そのものがいよいよ明日

れるべきものだ。――日本女そのものがいよいよ明日はモスクワを去ろうとしているのだ。

日、日本女はほんのわずかずつ眠った。彼女は毎日いろんなモスクワの街を歩き、そこにある様々な都会の秋の風景を心に刻みつけながら

様々な都会の秋の風景を心に刻みつけながら、自分とモスクワとのつなぎをゆるめる仕事をしていた。

包を或る一つの家へおくことで、又一つモスクワと日本女との間にある結び目がゆるめられるのである。

何処でも、馴れないモスクワの門は夜、気味がわるい。広くて、いろんなものが積んであって、

日本女は、モスクワにもう二年と六ヵ月暮してたのである。

つつソユーズキノ週報で先ず映画館の映写幕の上にころがり、つづいてモスクワの新造アスファルト道をもころがりはじめた。一九二九―三〇年に、モスクワの自動車の

タクシーは、モスクワで公営だ。運転手は月給で雇われ、働く。工場へ出勤するプロレタリアートと同じ

一九三〇年の初夏からモスクワの辻馬車は数でぐっと減り、馬車賃で倍あがった。

――モスクワに警察は一つじゃないだろ。おだやかな口調で日本女が答えた。

た間に日本女がその気ごころをいつか理解したモスクワの群集だ。