鎌倉 妙高山 長岡 松山 新潟 深川 銀座 上野 千駄ヶ谷

ものと見える。私は生田君とは不思議な縁で、鎌倉にも同じ時代に住んでゐて、同君が借りてゐた停車場前の時計

氏と最後に会つたのは、たしか私が越後の妙高山の中腹にある、赤倉温泉に滞在してゐた時のことだつたと思ふ。私

た、みんなが越後南州と称してゐた大村一蔵君を長岡に訪ね、その翌日二人は篠の井の駅で別れたのだつたが、

台湾喫茶店とパウリスタとがあるだけだつた。主人が洋画家の松山省三君だつたし、プランタンと云ふ命名者が小山内薫氏だつたので

中沢氏と、一晩山上で痛飲した揚句、これから新潟へ往かうと云ふことになつて山を下り、そこでも鍋茶屋その他

が、その頃はもうすつかり世の中を諦めてしまつて、深川あたりの裏長屋に、芸者上りの恋女房と、うき世を棄てた侘住居、のらりくらり

三四年頃のことだつたと思ふが、その時分この銀座界隈には、まだカフエと云ふものが一軒もなく、それらしいものと

銀座裏日吉町の民友社の傍、日勝亭と云ふ撞球屋の隣りにカフエ

小山内氏と私との三人は、そつとそこを抜け出して銀座へ往き、プランタンにも寄つた揚句、その晩、小山内氏と私とは

があつた。先代左団次の十三回忌かの追善の会が上野の常盤華壇であつて、伊井蓉峰氏等の空也念仏があつたり、

だらうと思ふ。生田君はその頃新詩社の近くの千駄ヶ谷に家を持つてゐて、新進小説家としての売り出し盛り、「阿蘭陀