良寛物語 手毬と鉢の子 / 新美南吉
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「佐渡に相川つて町があるでせう。」
と一人の子が佐渡から来た子にきいた。
「父ちやんは沢山小判を持つてたんだけどね、佐渡から舟で来るとき舟があんまり揺れたらう。そしたら船頭さんが、こりやこん
佐渡から来た角ちやんが、みんなの心をそらさないやうに、
に光つて見える。そしてその上には、なつかしい緑の佐渡が。
さういふ心持で良寛さんは、佐渡の方に頭を下げた。良寛さんはこの頃では、お母さんがそこで生れ
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いくつかの山河と、いくへかの雲の奥に、皇居があらせられるのである。そしてまた京都は、勤皇の志を遂げることが
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玉島へ来てから、よく子守の少女達と手毬をついたり、おはじきをはじい
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伊勢の道者か
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「こんどは何方の方面へゆく。また九州か。」
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ありました。つい二月ばかり前、佐渡奉行さまが、江戸から来て出雲崎に泊られました。わたしは名主だから宿や船のこと
これから江戸へ出て、それから京都にのぼり、そして目的地の備中の国、玉島へいく
江戸に来たとき、江戸の家々や寺々はにぎはつてゐた。幕府の
江戸に来たとき、江戸の家々や寺々はにぎはつてゐた。幕府の勢力の盛なためで
亀田鵬斎といふ、偉い学者が、江戸にゐた。その人は字がうまいので、天下に勇名であつた。
「わたしは、江戸の亀田鵬斎といふものですが……。」
ないやうな貧しい生活を、何故してゐるのだらう、江戸へ持つてゆけば、禅師の書はきつとよい値で売れるだらうに。
「一つ、江戸へ出て来られてはいかがですか。それだけの手を持つてゐられれ
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その由之さんも馬の背にゆられて、国上山をおりながら思つた。
「あれは、国上山に住んでをられる、良寛といふお坊さんが、書かれたものです。
亀田先生は馬をやとつて、国上山にいつた。そこの麓についたのは、落ちかかつた秋の陽
「国上山だ。」
「えッ国上山。どうしてまた急に、そんな遠くへ出掛けるのか※。」
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「お父さんが長岡から、こんなでかい紙鳶を、買つて来てくれたから見に来なよ
「新太郎ちやん、尼ヶ瀬へ行かないか。長岡から買つて来た大きな紙鳶を、見せてくれるさうだよ。」
長岡から買つて来た紙鳶といふ言葉は、新太郎ちやんの眼に活気を入れ
といふ言葉は、新太郎ちやんの眼に活気を入れた。長岡は越後の大きい町で、そこでは立派な紙鳶がつくられたからである
「今からね、長岡へ行つて紙鳶を買つて来るんだ。」
頃、亀田先生は北国を旅してゐて、越後の長岡へやつて来た。
長岡の町の一番にぎやかな通を、歩いてゐると、亀田先生は、今までに
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、その武士は尋ね尋ねて遂に京都にやつて来た。京都は大きい都で路を往き来する人が多かつた。この大勢の人の
或年の秋の或日、その武士は尋ね尋ねて遂に京都にやつて来た。京都は大きい都で路を往き来する人が多かつ
その武士は京都にしばらくとどまつて仇敵を探したけれども、仇敵はやはり見つからなかつた。
。武士は消えかかつた勇気を取返し、刀を研いで京都にのぼつて来たのである。
といふ見当がついたからであつた。或旅商人が、京都で笛のうまい人を見たといつた。よくきいて見ると、それ
。今度京都にやつて来たのは、大体、仇敵が京都にゐるといふ見当がついたからであつた。或旅商人が、京都で
年の後、武士は再び京都にやつて来た。今度京都にやつて来たのは、大体、仇敵が京都にゐるといふ見当が
そして一年の後、武士は再び京都にやつて来た。今度京都にやつて来たのは、大体、仇敵
京都では、武士はまた去年の家に宿をとつた。去年のやうに
武士は家もなかつたし、京都には知合もなかつた。売つてお金になるのは刀だけであつ
これから江戸へ出て、それから京都にのぼり、そして目的地の備中の国、玉島へいく、遙かな道のこと
京都の大きい町は静かだつた。皇室のあらせられる京都が、何故このやうに悲しげな姿に見えるのか、と良寛さんは
であると良寛さんは思つた。京都に来たとき、京都の大きい町は静かだつた。皇室のあらせられる京都が、何故この
の勢力の盛なためであると良寛さんは思つた。京都に来たとき、京都の大きい町は静かだつた。皇室のあらせ
日、思ひまうけぬことが訪れて来た。それは京都からの飛脚が持つて来た。
通の手紙を渡して去つた。お父さんの以南さんが、京都に出てゐることを、前から知つてゐた良寛さんは、お父さん
「いいえ。今度は高野山、京都を経て、生れ故郷へ参るつもりです。」
「父が死にました。京都の父の知人から今手紙が届いたのです。」
が、私の手許にございますから、都合がつきましたら京都まで来て下さい、といふ意味のことが書いてあつた。
と京都から手紙をくれた人は、良寛さんを見ると懐しさうにいつた。
さんがきかれました。『今から京都へ帰ります。京都ではわたしが帰ると、俳句の大会がありますよ。どうです、一
へ。』と以南さんがきかれました。『今から京都へ帰ります。京都ではわたしが帰ると、俳句の大会がありますよ
「何でも京都へ出ていらつしやつたのも、ちやんと家でさういつていらつ
――父が俳句にことよせて、京都にのぼつたのも、その志を遂げる機会を、見つけたかつ
そして良寛さんは、京都を立去り、故郷に向かつた。
の奥に、皇居があらせられるのである。そしてまた京都は、勤皇の志を遂げることが出来ず、憤慨して死んだ父の
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と良寛さんは、うしろから声をかけられた。肥前長崎から、東の方へゆく街道の上だつた。よく晴れた秋の正午
、それをやつて見ようと思つて、はるばる雲水して、長崎へやつて来ました。」
しばらく棄てねばなりませんでした。そこで今度は、長崎から清へ渡ることを企てましたぢや。昔から、支那へ行つて偉く
――よしッ、もう一ぺん長崎へゆかう、もう一ぺん船のりに頼んで見よう。是が非でも、
「わしは、もう一ぺん長崎へ戻りますぢや。ちよつと思ひついたことがあるで。」
秋は陽の落ちるのが早い。良寛さんが、長崎の街と湾を見おろす丘の上まで、辿りついたときには、空に
良寛さんの眼は、出島の先を通つて、今長崎の港を出てゆくところの、一艘の帆船にとまつた。
長崎から清へ渡ることに、失敗した良寛さんは、また備中玉島の円通