本庄 桜田門

して横町へ折れた。続いて曲ろうとした途端、本庄は行手の暗がりから、ぬッと出て来た大男が、辰馬の後を飛ぶ

に照らされた空車の二字が目に入った刹那、本庄は救われたような喜びに我を忘れて合図の手を高くさし挙げ、

雨は小降りになったが、北風が少し寒かった。本庄は先に立って大跨で飛ぶように歩いた。

本庄はなるべく好い印象を与える必要があると考えて、頭髪には油をこッて

改って、向い合いに腰を下すと、本庄はまた急に不安になった。何を云い出されるのかと思って、

本庄はちょっと面喰ったが、何だか非道く馬鹿にされたような気が

と媚を含んだ眼で、本庄の顔を見ながら云った。

事務所には本庄の顔を知っている小使はいなかった。合鍵を貸せと云うと変な

暫時すると十三が馳け出して来て、いきなり本庄の手を握り、しなやかな体をすりつけるようにして、耳元に唇を寄せ

本庄は夢中で走った。

てきたという話を受け売りしていた。が、本庄の顔を見るといきなり手を握って、

桜田門で電車を降りたが、今日位警視庁が厳しく、恐しいものに見えた