琉球 ロタ島 ポリネシア パラオ語 東京 隅田川

沖繩縣人ばかりの爲の――從つて、芝居は凡て琉球の言葉で演ぜられる――劇場である。私は、何といふことなしに

凋み、海風にざわめく枯椰子の葉のそよぎも哀しい。（ロタ島の椰子樹は最近蟲害のために殆ど皆枯れて了つた。）目に

見てをるのでもない。ロティとメルヴィルの畫いたポリネシアの色褪せた再現を見てをるに過ぎぬのだ。そんな蒼ざめた殼をくつ

」と警官が言つた。「ナポレオンの野郎、今ではパラオ語をすつかり忘れて了つとるんですと。何をあれに聞かせても通じんの

興味も無い筈である。何故、こんな意味も内容も無い東京生活の薄つぺらな一斷面が、太平洋の濤に圍まれた

ゐた時、私は、突然、何の連絡も無く、東京の歌舞伎座の、（それも舞臺ではなく）みやげもの屋（あられや飴や

あとでＨ氏に聞くと、東京の何處とかの女學校に二三年（卒業はしなかつたらしいが

載つてゐた一册は、たしか（彼女が曾て學んだ東京の）女學校の古い校友會雜誌らしく思はれた。

も最近偶然結婚（隨分晩婚だが）の話がまとまり、東京に落着くこととなつた。勿論、南洋土俗研究に一生を捧げた氏の

聞いてゐる中に、私は、ひよいと能の「隅田川」を思ひ浮かべた。母なる狂女に呼ばれて幼い死兒の亡靈が