腐った蜉蝣 / 蘭郁二郎

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東京

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神経衰弱だ、といわれたのを機会に、失恋の東京から、暫く遠ざかるのもよかろうと、小別荘を借りて移って来たの

た、小さな町にいた。自分から、あの華やかな「東京」を見棄てこんなネオンライト一つない町に、進んで来たわけでは

、親しく暮しているであろうことを思うと、それだけで東京全体が、ひどく穢わしく淫らがましく、酸ッぱいものが咽喉の奥に

以上の交渉を、わざと執ろうとはしなかった。それは東京の何処かに、ネネ(ああ、私は今でも、曾つて恋人と

東京との交渉は、月の下旬に、老いた母の手を通して送ら

(それを忘れるまで、東京へは帰るまい……)

私は、そう思っていた。そう思って東京を棄て、まだ春も浅い、さびれた海岸町に来たのだ。

(東京へ帰ろうか――)

を其処で迎えてしまったのであろう。その前になぜ東京へ帰って仕舞わなかったのであろう、と悔まれるのであるが、しかし

『ほう、東京の人かね』

時宜を得た処置のためか、ぐんぐん恢復して軈て、東京に帰って行った。

既に、ネネと木島とが東京へ帰ってから、三月が経った。

はいえん、という奴でね、話によると、東京の医者は顔を知られてるから駄目だというんで、わざわざ埼玉の