東京 銀座

だが、折角のこのＫ――の夏を見棄て周章て、東京に帰るにも及ぶまい、という気持と、それにこのサナトリウムが学友の

――彼女（翌日の新聞で東京の実業家大井氏の長女瑠美子であることを知った）は、あの浜に

恰度その頃は、学校も休みとなるし、時間的にも東京に近いこのＫ――町の賑わいは、正に絶頂に達するのである。

も休暇をとったんで、見舞いがてら来たんだ、東京は熱気で沸騰してるよ』

。それは恰度ここ数日の間に、東北の僻村から銀座通りへ移されたような、驚ろくべき変化だった。

ほか、シーンとしていた。おそらく山鹿は、海の銀座、Ｙ海岸の方へ、出かけてしまったのであろう――。

つらねたように、灯の輝いているのが、今、銀座のように雑沓しているであろうＹ海岸であった。然し、この人