本郷 鎌倉 牛込 建長寺 東京 駒込 上野

當るから、見てゐやがれ。手前は田舍者だから本郷の振袖火事なんてことも知るまいがな、今に思ひ當るから、見て

傳つてゐるのだらうとも、思はれた。自分も時々鎌倉から出て來て、二三度も一緒に風呂に行つたことがあるが、

と軒下を傳ふやうに歩いてゐる父の姿に、偶然鎌倉から出て來た自分が出會ひ、思はず涙を呑むやうな氣持に打た

ないか。それでは兎に角先方から手紙の來次第僕が鎌倉へ行つてどつちかへ話をきめて來るが、その結果で、それで

て、おせいが顏色を變へて行つて見ると、鎌倉から叔父が出て來てゐた。が結局警察でも「もう子供のこと

翌日東神奈川からやう／＼のことで汽車に乘り込み、鎌倉に行く前にゐた今の下宿に轉げ込むやうにしてはひつた

年暮れに迫つて前觸れもなく出て來て、牛込の弟夫婦の家に居ることになつたのだ。その時分から父はかなり

て來る度に山茶花の幹にしがみ附いてゐた。建長寺内の大建物は山門を殘したほか悉く潰れて、大方丈の裏の

自分は高い石段の上から杉の樹の間を通して建長寺の大本堂、方丈、佛殿などの潰れた屋根を見下ろして、さつきの叫び

不自由から、滅多に外へは出なかつた父が、この東京のごみ／＼した劇しい通りの街中を、脚を達者にするため散歩

より、やはり子供たちといつしよの方がいゝ。わしには東京の散歩で結構だ」と、父はかぶりを振るやうにして云つた

生玉子を飮むことを缺かさなかつたのだが、東京へ出て來て、生玉子を飮むと屹度下痢をするので、

自分は斯う云つて、妻と別れて來た。が東京に引返して見ると、同じ斯うした日々だつた。自分は明けて十二

Ｔの休みの日なことを思ひ出し、勇氣を出して駒込まで歩いて行つた。Ｔは二三日前から風邪を引いて休んでゐる

後から自分の俥を追ひかねまじき氣配で、汽車が上野を出て、初めて自分はほつと息を吐いた。自分は妻に彼女の